ママさんプロがツアー参戦できる環境を

 女子ゴルフ界にもママさんプロが増えてきた。中でも茂木宏美、佐藤靖子は今季ツアーにフル参戦。福島晃子は現在も実力者としての存在感がある。この傾向は今後、大きくなることはあっても、小さくなることはないだろう。

 増え始めたママさんプロは独身プロとは立場がまったく違う。自分が試合で戦っている時、子供の安全を守るにはどうしたらいいかを考えなければならない。たいていは自分の母親か夫に見てもらうようだが、これは自分にとっても、面倒を見る相手にとっても、相当な労力だろう。

 日本女子プロゴルフ協会はそれなりのサポート体制を設けている。「トーナメント規定関連規定 産休制度」第2条は「対象者に対して出産日から36カ月が経過するまでの間を限度として産休を認めるものとする」としている。いわゆる女子プロ版産休制度である。

 この制度の対象者は前年度の賞金ランキング50人で、これは賞金シード選手のこと。産休が認められた選手は、その時点で持っているシードを一時凍結することができ、復帰した時にもシード選手として試合に出場できる仕組みだ。ただ、この産休に関する制度の整備はまだ不十分と言わざるを得ない。米国の女子プロツアーでは、託児所を設置したトーナメントもあるが、国内には現段階ではない。

 こういう過渡期ともいえる状況下で、各ママさんプロはかなり頑張っている。託児所がないのであれば、自分たちで自分の子供を守り、なおかつ職場を確保しなくてはならないというわけだ。

 例えば、茂木の場合はかなり恵まれている。2010年に結婚した元スノーボード選手の窪田大輔さんが“主夫”と公私両面を支えてくれる。その“内助の功”で、11年5月にヨネックスレディース、13年5月にはメジャーのワールドレディース・サロンパスカップで優勝を果たした。

 その年の8月には妊娠を発表。秋の日本女子オープンを最後に産休に入り、14年2月に長女・和奏(わかな)ちゃんを出産した。

 「私の場合は夫の存在がすごくありがたい。彼がいなかったら、私はゴルフに専念することなどできなかったと思う。スノーボードで身につけたマッサージで体調管理も手伝ってくれる。子供はいつも一緒にいてくれる夫をママと思っている感じで、少し寂しいくらいですが」

 産休を利用した茂木は、昨年6月のアース・モンダミン・レディースでツアーに復帰。しばらくは産後に変化した体調との戦いもあったが、今季はツアー選手の軸として各大会で好成績を残している。

 茂木以外にも昨年の最終予選会(QT)で1位になり、今季ツアーフル参戦中のベテラン佐藤や福嶋もママさんプロとしての在り方を模索している。佐藤は主に実家の母親に試合出場中や練習中の子供の世話を見てもらっている。そのために神奈川県内の実家を新築した。

 福嶋は産休制度の適用を受けられなかったが、復帰後、その飛距離に磨きがかかった。やはり母親に子供の世話を見てもらっているようで、ツアー会場では、一家でむつまじくすごしている風景を見かける。

 今後、増えるであろうママさんプロたち。国内女子ツアーで出産後に優勝した選手は森口祐子、樋口久子、木村敏美、塩谷育代、山岡明美がいる。茂木や佐藤、福嶋、さらに彼女たちに続くママさん選手が、快挙を達成できるのか。何も足かせのない若手選手と条件がイーブンとは言い難い。

 日本女子プロゴルフ協会はできるだけ早く全トーナメント会場に託児所を設ける案件を真剣に検討した方がいいのではないか。そうすれば魅力あふれる中堅、ベテランがツアーの中心選手として残る可能性が生まれるだけでなく、彼女たちに若手が技術やメンタル、練習方法を伝授してもらう機会も増える。

 ゴルフは年輪を重ねる程うまくなる、パットは人それぞれでも、飛距離は道具でなんとでもなる。有能な女子プロがママさんになっても、ツアー参戦できるような環境作りが急務だと考えるが、いかがか?

(デイリースポーツ・松本一之)

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