福永祐一も焦がれる、伝統の雪上競馬

 今さら言うまでもないことだが、競馬は世界中で親しまれている。国際競馬統轄機関連盟(IFHA)に加盟しているのは現在、59カ国。加盟外もカウントすれば、競馬は100カ国以上で開催されているという。

 当然、広い世界には珍しい競馬も存在する。とりわけ、時季的にも紹介したいのは“雪上競馬”だ。大会名「ホワイトターフ」で検索すれば、レース動画がヒットするので確認してもらうのが手っ取り早いのだが、文字通り雪の上で行われる競馬である。

 毎年2月、スイスのサンモリッツ競馬場で開催されるこの大会、1907年から100年以上に渡って行われてきたというから、1920年創設の凱旋門賞よりもはるかに歴史は古い。アルプスの名峰を背景に、人馬が雪煙を巻き上げながら走る様は壮観。滑らないように特殊なスパイクが施された蹄鉄を着け、各馬がすさまじい地響きを立ててパワフルなフットワークを披露している。

 実は“競馬場”と言っても、コースは凍った湖の上。クッションの役割を果たす雪が少なくとも30センチ積もるのを待って整備されるため、コンディションが整わない場合は中止になるケースもあるらしい。ちなみに、平地競走のほかにも、馬車を引くトロッティング、馬に引かれてスキーを行うスキージョリングも実施される。

 名だたるトップジョッキーが参戦することでも有名だ。09年にはデットーリが登場。13年にはM・デムーロがシーズン2勝をマークした。昨年、短期免許で日本を訪れたペドロサも、来日直前にホワイトターフで騎乗している。栗東トレセンに来ていたバルジューに聞くと「僕も過去に誘われたことがあるよ。招待騎手への待遇はかなりいいらしい。寒いのが何より苦手なので断ったんだけど、映像は何度も見た。とてもエキサイティングだね」と話してくれた。

 例年、世界各国から3万人以上の観客が集まるとか。シンザン記念が行われた11日の京都競馬場入場者数は2万2980人だから、その盛り上がりは容易にうかがい知れよう。G2のサンモリッツ大賞は1着賞金こそ4万6666スイスフラン(約546万円)と、高額な日本のそれと比べれば10分の1程度だが、出走させる陣営は現地でのセレブとの人脈づくりなど、賞金以上の魅力も感じているようだ。

 「引退後になるだろうけど、一度は生で観戦してみたいよね」と福永祐一も焦がれる伝統の競馬。今年は2月8、15、22日に開催予定だ。思い立ってすぐに行けるほどお手軽なものではないが、時間とお金と、何より好奇心があるという競馬ファンはぜひ。

(デイリースポーツ・長崎弘典)

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