安楽獲得!新米スカウトいきなり大仕事

 楽天にドラフト1位指名された済美の157キロ右腕・安楽智大投手(18)。1日に仙台市内で行われた入団会見では、自ら選んだ背番号「20」のユニホーム姿がお披露目され、「20年活躍」と「20勝」を力強く誓った。

 この日が来ることを信じ、密着マークを続けてきたのが山下勝己スカウト(37)だ。現役時代は近鉄と楽天でプレー。2008年に引退後、球団職員などを経て2013年から楽天の中四国担当スカウトとなった。

 着任から間もない同年3月、初めて視察に訪れたセンバツで、いきなり“運命の出会い”が待っていた。甲子園のマウンドで、豪快なフォームから150キロ台を連発する怪物右腕。その投球に衝撃を受けた山下スカウトは「見た瞬間に獲りたいと思った。あの体に惚れました」と振り返る。

 それ以来、安楽が登板する試合には必ず山下スカウトの姿があった。昨秋に右肘を痛め、マウンドに復帰するまで時間がかかったが、その間も変わることなく熱視線を送り続けた。

 10月23日のドラフト会議。安楽の1位指名が決まったのは当日の朝だったという。球団は最後まで右肘の状態を不安視していたが、最終的に「問題なし」と判断。複数の候補選手の中から安楽に絞った。その裏には、若きスカウトの猛アピールがあったに違いない。

 安楽も山下スカウトの熱心な姿をよく覚えている。「山下スカウトには何度も、雨の中でも練習場に来ていただいていた。自分も指名してほしいと思っていた」。指名あいさつ後の会見で、感謝の言葉を口にした。

 9年間の現役時代は強打の内野手としてプレーした山下スカウト。03年のウエスタン・リーグで2冠王(打率・361、19本塁打)に輝いたこともあるが、1軍ではなかなかレギュラーに定着できず、目立った成績は残せなかった。

 スカウトとしては、いきなりの大仕事だ。ただ、本当に喜べるのは安楽が期待通りの活躍を見せてからだろう。安楽本人は「開幕から1軍のローテに入りたい」と意気込むが、山下スカウトは「まずはしっかり体を作って、1年後、2年後に勝負できたら」と話した。早く活躍は見たいが、焦ってほしくはない。それも“親心”だろう。

 「一番の魅力は、やっぱりストレート。そこを極めてほしい。エースになってくれると思って獲った。12球団を代表する投手になってほしい」。四国から東北の地に旅立つ怪物右腕がプロとして成長する道のりを、山下スカウトは静かに見守っていく。(デイリースポーツ・浜村博文)

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