人間風車ビル・ロビンソン氏の言葉とは
名レスラーの人間風車ことビル・ロビンソンさんが3月3日に75歳で亡くなった。75年、新日本でのアントニオ猪木戦など数々の名勝負を残し、引退後の99年から08年まで東京・高円寺に在住。「U.W.F.スネークピットジャパン」で後進を指導した。訃報にショックを受けたプロレス関係者、ファンも多いはずだ。
藤波辰爾(60)の長男・LEONA(20)は、ロビンソンさんから直接指導を受ける約束がかなわず落胆した。英国修行のため、マンチェスター入りした3日に現地空港で、指導を受けるロイ・ウッドから「バッドニュースだ」と訃報を知らされた。ロビンソンさんがランカシャーレスリングを学んだビリー・ライレージムの後輩、ウッドは「(出身者が)1人になってしまったよ」とうなだれていたという。
伝説の人間風車の言葉は忘れられない。LEONAは昨年9月、ロビンソンさんとはリングで対戦のなかった父・藤波、ロビンソンさんに夢中になってプロレスに興味をもった母・伽織さん、ウッドを交え、仕事で現地を訪れていたロビンソンさんとマンチェスター近郊で会食した。
半年前のロビンソンさんは足は悪かったものの、食欲もあり元気だったという。伽織さんのエピソードを受け、藤波に「オレのおかげで結婚できたんだよ」とジョークを飛ばすなど、ご機嫌だったが、“プロフェッショナル”の片りんも見せられた。LEONAが「レオナ・フジナミです」とあいさつすると、ロビンソンさんがにこやかに右手を出してきた。LEONAが何の疑いもなく両手で握手すると、70代とは思えない力でグッとつかまれたという。
力の強さに驚いていると、「握手でも気を抜くな。すべての人間が紳士とは限らないぞ。相手を信頼しきるな」。修羅場をかいくぐった男の言葉が胸に突き刺さり、“本物”のレスラーと理解できた。同じ日には「(プロレスを)やるからには、習ってることに自信を持ってやれ」とエールも送られた。
今月25日に来日予定だったロビンソンさんとは再会を予定していた。さらに、将来的に時間を合わせて、ロビンソンさんが暮らしていた米国で指導を受ける予定もあったという。対面から2カ月後の昨年11月にデビューした20歳の若者は「本当に残念です」と唇をかんだ。
プライドと確かな技術をもって、プロレスの奥の深さを伝えられる数少ない1人だっただけに、ロビンソンさんの死はマット界にとって大きな損失だ。
(デイリースポーツ・大島一郎)