沙羅悔し4位「次こそ感謝の気持ちを」

 「ソチ五輪・ノルディックスキージャンプ女子ノーマルヒル・決勝」(11日、ルスキエゴルキ・センター)

 新種目で、優勝候補といわれた高梨沙羅(17)=クラレ=は1回目に100メートルで3位につけたが、2回目は98・5メートルで合計243・0点の4位にとどまり、メダルを逃した。今季のW杯では表彰台を外したことはなく、13戦10勝と圧倒的な強さを誇っていたが、まさかの結果となった。伊藤有希(19)=土屋ホーム=は7位に入賞。山田優梨菜(17)=長野・白馬高=は最下位の30位だった。

 こんな悲しいストーリーを、一体誰が予想しただろう。自分が立っているはずと信じ抜いた表彰台を、複雑な思いで眺めた。「今まで一緒に戦っていた仲間だったので、本当におめでとうという気持ちと、自分もあそこに立ちたかったという悔しい気持ちでいっぱいになりました」。偽らざる気持ちだった。

 初めて見せる光景だった。記念すべき、五輪初ジャンプとなった1本目。最終30番手でスタートゲートに座り、助走路へと降りる直前だ。体を解きほぐすように両肩を回した。「いつもの試合と同じような気持ちで臨んだ」という高梨だが、普段と何かが違った。

 金メダルまでの差は4・4点。昨夏から課題克服に取り組んできた着地時のテレマーク姿勢が不発。その差が勝負を分けたのも、残酷な事実だった。

 歯車が微妙に狂う兆候はあったという。山田いずみコーチが明かす。「ここに来てから本人の感覚がうまく合わなかった。(1月25日の)プラニツァのあたりからちょっと怪しかったんですけど、その後(のW杯も)納得していないジャンプで何とか頑張ってきてた」。迫る本番を前に、不安は確実に広がっていった。

 それでも、心を強く持った。山田コーチは「普段『勝ちたい』と言わないんですけど、ここに来て『勝ちたい』という言葉を何度も何度も聞いていた」。すべては「今まで支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えるためにここに来た」(高梨)からだった。

 試合後、伊藤と抱き合うと顔はくしゃくしゃになった。ドーピング検査前に山田コーチと二人きりになると、さらに涙があふれた。「メダルを見せてあげられずにごめんなさい」。山田コーチも答えた。「ごめんね」‐。

 だが、ここで終わりではない。4年後にはリベンジの舞台がある。「今度こそ感謝の気持ちを伝えられるようにいいところを見せたい」。新たな物語が始まる。

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