早見あかり、野望ない無色透明の女優業

 女優の早見あかり(21)が初主演舞台「夢の劇-ドリーム・プレイ-」に挑んでいる。スウェーデンの劇作家ストリンドベリが100年前に書き上げた作品は夢と現実が複雑に入り交じり、難解だ。女優を目指し、ももいろクローバーを脱退してから5年。神の娘アグネスを演じる早見の評価は日に日に高まっているが、「野望とか全くなくて」と屈託がない。色を付けようにも無色透明といった趣。女優・早見あかりの現在地を探った。

 公演終了後の楽屋、三方向を客席に囲まれた舞台の中央で2時間、神の娘を演じきった早見の顔は、ほのかに上気していた。

 4月12日にKAAT神奈川芸術劇場で開幕し、30日に打ち上げ。5月は長野(4、5日)と兵庫(14、15日)で上演される。「本当にあっという間だと思います」と笑った。

 アグネスは人間界に降り立ち、人々の苦悩や悲哀を目に焼き付けて天界に帰る。ダンサーが舞い踊り、不条理で複雑な物語が展開される。1月の会見では舞台初主演の重圧も相まって泣いてしまった。「お客さまの前に立つのが怖い、と泣いたので」と、今では笑い話。1カ月半かけて週6日、1日7時間の猛稽古を積んできた。

 「飽き性なので『舞台って同じことやるじゃん』と思ってたんですね。でも、1ミリずつ一つの作品が成長していって、最後には何センチも伸びたものになっている。『変化が面白いから舞台はやめられない』と言われたのが分かった気がします」

 2011年のももクロ脱退から5年。「アイドルを辞めてから、つらいと思ったことはないんです」と振り返る。「好きなお芝居をさせてもらっている。ももクロ辞めなきゃ良かったみたいな後悔は一度もしてない」。そう語る表情は、充実感に満ちていた。

 何色にも染まっていないのが武器だ。「私、基本的に何も考えていないので」と笑う。「この仕事を天職だなと思いながらできているのが一番大事」が哲学。女優を楽しむ、その一点だけはブレさせない。

 「よく同世代に素晴らしい女優さんがいますが、その競争をどうやって勝ち抜いていきますか?と聞かれるんですけど、私は競争から2本ぐらいズレたラインでフワフワうまく残れないかなぁと思ってるんです。楽しんでやれているので、だからこそ『あかりちゃん、使おう』と思ってもらえてるのかなって」

 今作もKAAT芸術監督・白井晃(58)の指名だった。青色に輝いたアイドルは今、無色透明な女優として、独自のポジションを築きつつある。

 ◆早見あかり(はやみ・あかり)1995年3月17日生まれ、東京都出身。小6の時に池袋でスカウトされる。2008年5月結成のももいろクローバーでサブリーダーに。11年4月、女優を目指し脱退。14年、「百瀬、こっちを向いて。」で映画初主演。NHK連続テレビ小説「マッサン」で主人公の妹を好演。15年、「ラーメン大好き小泉さん」で連続ドラマ初主演。身長165センチ。血液型A。

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