９日に心不全のため８５歳で死去した作家で元参院議員の野坂昭如さんの近親者による密葬が１２日、都内の自宅でしめやかに営まれた。

　正午過ぎ、ハットをかぶりタバコを吸ったダンティーな野坂さんの遺影を手にした長女の麻央さんが目を潤ませながら自宅から姿を見せた。歌手としても活躍した野坂さんのシングル「黒の舟唄」などライブ音源が流れ、近親者ら約３０人が見守る中、出棺した。

　参列した出版関係者によると、密葬は野坂さんの仕事場でもあった書斎で執り行われたという。野坂さんはレザージャケットに紺のサングラス姿で「りりしく威厳のある野坂さんらしい、いい顔でした」と言い、妻の暘子（ようこ）さんは「一番いい顔をしていますので見てやって下さい」と努めて気丈に振る舞っていたという。

　野坂さんは小説「火垂るの墓」などで直木賞受賞したほか、政界進出やラグビーチームを結成するなどした。幅広く活躍した故人らしく、棺には原稿用紙、鉛筆、缶ピース、赤を基調としたラグビーシャツが収められた。

　本葬は１９日に東京・青山葬儀所で営まれる。弔辞は未定という。