「バタやん」の愛称で親しまれ、「かえり船」などのヒット曲で知られた歌手の田端義夫（たばた・よしお、本名田畑義夫）さんが２５日午前１１時４５分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。９４歳。三重県出身。葬儀・告別式の日取りは未定。

　１９１９年（大正８年）１月１日、三重県松阪市生まれ。１０人兄姉（男５人女５人）の９番目、四男だった。第二次世界大戦中も興行を行い、名古屋、神戸、大阪で大空襲に遭いながらも公演を続けた。明るく気さく、前向きな人柄で知られた。私生活では４度結婚している。

　田端さんの４番目の妻の長女で、田端義夫音楽事務所社長を務める宮田紗穂里さんによると、田端さんは、２０１０年３月３１日に自宅で転倒し、病院に搬送。その際、胃潰瘍（いかいよう）が見つかり、そのまま入院した。

　その後は、一進一退を繰り返しながらも、新曲、舞台への情熱を燃やし続け、時に看護師や家族にジョークを飛ばしながら闘病生活を続けていたという。

　しかし、今月２４日に容体が急変。２５日午前１１時４５分、家族に看取られ、永遠の眠りについた。

　田端さんは新人歌手コンクールをきっかけに、１９３９年（昭和１４年）「島の船唄」でデビュー。ギターを水平に抱え、右手を挙げて「オース！」とあいさつするスタイルで人気を集め、「かえり船」「大利根月夜」「島育ち」など多くの大ヒットを生んだ。

　８９年に勲四等瑞宝章。９５年から日本歌手協会会長を務め、２００３年から名誉会長。