静かにオファー待つ人情家・鉄平

 静かに戦力外通告を受けた。かつてのタイトルホルダーが、突きつけられた現実。目立った選手は10月初めの第1次に受けるイメージが強い、戦力外のシステム。オリックス・鉄平外野手は、日本シリーズ後に行われる第2次でそれを受けた。だからかはわからないが“静かに”という表現が、ぴったり当てはまった。今は、他球団からのオファーを待ちながら、トレーニングする毎日だ。

 「やっぱりか、と。この成績でしたから」。楽天に在籍した09年に、打率・327で首位打者を獲得。翌年も打率・318と奮闘した。だが11年以降は失速。13年オフにオリックスにトレード移籍し、今季は13試合に出場、22打数3安打だった。

 今年は2軍では4割を超える打率を記録。だが、手応えを感じつつ、シーズン中に脇腹、左太ももと2度の負傷離脱。左太ももの肉離れを起こしたのは9月だった。「この時期にこのケガは痛い。(戦力外の)覚悟をしないといけないです」と、打ち明けていたのを思い出す。

 野球選手らしくない。私の印象である。10年、楽天担当になったばかりのキャンプ地、久米島のロビーで記事を書いていると「はやっ!」と声がした。横に、私のタイピングを見ていた鉄平が座っている。ろくに会話もしたことのない記者に、選手の方から寄ってくるなんて初めてのことだった。不思議なものを感じ、後日食事に出かけた。

 その後も数え切れないくらい取材をし、お酒を飲み、時には難解な野球論を教わり、私は趣味のギターを教えた。探求心、好奇心、研究心はすさまじく、ギターは半年後には人前で弾き語りを披露できるようになっていた。野球に対しても、そうなんだろうと思う。

 もともと引っ張っていく親分肌ではない。チームメートで行動を共にするといえば、楽天では牧田だったし、オリックスでは中村と聞いている。ハッキリ言えば、団体行動での存在感は薄いタイプだ。文字にするとひどくも聞こえるが、それが鉄平らしい。ただ、与えられた仕事は黙々とこなしてきた。

 人情味は厚い。同僚だった渡辺直人がオフにトレードされた時、報道陣の前で涙を流した。星野元監督が腰痛で監督業を休養した時、すぐに関係者にお見舞いの電話をかけた。

 今は球界関係者から「鉄平大丈夫ですか?」や「鉄さん心配です」と、至る所で聞かれる。色んな人が、案じている。それを聞くたび、少しうれしくなる。それこそが鉄平の、静かに残してきた足跡でもあるからだ。

 現段階で、他球団のオファーはない。独立リーグや、海外への挑戦は考えていないという。春のキャンプまでに誘いがなければ、ひっそりとユニホームを脱ぐことになるだろう。厳しい現実だが、悲壮感はない。

 「仕方がないですよ。それがこの世界。どこの世界もそうだと思います。でも、外に目を向ければ、色んな選択肢がある。やりたいことは、山のようにありますよ。どこかの駅で、路上ライブをしてるかもしれない」

 まだ32歳。負傷した2つのケガも完治した。「最後の悪あがきってやつです」。限りなく可能性の低くなった吉報を待つ。ただ、静かに。(デイリースポーツ・橋本雄一)

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