PTAも公認、優等生バンド・空想委員会

「ライブハウス」に初めて行ったときのことを覚えているだろうか。フライヤーがざっくばらんに貼られた壁を伝って地下へと階段を下り、暗がりのなか重い扉を開けて・・・。ここ数年、オープン空間のフェスには行ったことがあるけど、ライブハウスには行ったことがないという若者が多いようで、「なんか怖いイメージ」「親に危ないから行くなと言われた」と、時代が変わってもその理由は変わらない。

そんななか、「安全かつ健全にはしゃぐ」というテーマを掲げ、気軽にライブハウスに来て欲しいという思いで活動を続けているバンドがいる。3人組ギターロックバンド・空想委員会だ。2014年にメジャーデビューしたが、インディーズ時代からライブに対する考え方はずっと同じ。ライブ好きはもちろん、ライブ初心者にも楽しんでもらいたい!とさまざまな企画をおこなっている彼らに、それに至ったきっかけや思いを聞いた。

──「安全かつ健全なライブ」というのはどういったことがきっかけで掲げるようになったんですか?

佐々木(g)「ただ単純にケガして帰って欲しくないっていう気持ちがあって。僕もお客さんとして昔はダイブしたり結構激しいタイプだったんですけど、僕らのライブではそういうの無しにして、一番前の人から後ろの人まで全員に楽しんでもらえるライブをやりたいなと思って掲げたんですよね」

三浦(vo&g)「僕らのライブは学生さんも多いですし、女の子も多いから。暴れなくても楽しめるっていうのを伝えたくて。ライブに慣れている人も、初めての人も、体力に自信のない人も、誰もが楽しめる空間をみんなで一緒に作りたいと思ったんです。なので、みんなのおかげでライブのマナーがすごく良い」

──その精神をもとに、ライブの楽しさを知ってほしいと始めた企画がたくさんあります。まず、アマチュアの学生バンドに混じってのライブを定期的に行っていること。以前も『ROCK IN JAPAN』という大規模フェスの翌日に、楽器を始めたばかりの高校生と対バンしたそうですね。

佐々木「学生の頃ってあんまりライブハウスに行くという考えって無いと思うんですよね、怖いイメージがあったりして。でも『友だちが出演するなら見に行こう』とか、そういうきっかけでライブハウスに来てもらって、どんなところか知ってもらえたらいいよねっていう思いがあって。なので、フェスよりも盛り上げるぞ!って気持ちで高校生たちと対バンしてます」

三浦「それをきっかけに、他のバンドのライブにも行くようになったとか、バンドを始めたという学生もいて、うれしいですね」

岡田(ba)「ライブハウス自体も今は変わったよね。すごい親切だし、きれい」

──いつも学校があって時間的にライブに行けない人や、地方に住んでるのでライブに行きたくても行けない人のために『夏休みツアー』を開催したり、ライブきっかけで旅を楽しんでもらうための『空想トラベル』という架空の旅行会社を設立したり・・・。公式サイトにはライブチケットの買い方から、ライブ中のマナー、さらにはぼっち(一人)参戦の楽しみ方まで事細かに説明があって、親切すぎて感動しました。

岡田「昔、僕らがわかんなかったんですよね。買うときも電話で簡単に予約できるとかも知らなかったし、そういう初めての人たちにもわかりやすくしてあげたほうがいいかなと思って」

三浦「ありがたいことに、初めてのライブが空想委員会ですって人が多くて。それで僕らも初めてライブに行った時のことを思い出して、あれわかんなかったなとか、あれ不安だったなとか、相談しながらなるべく丁寧にレクチャーするようにしてます」

佐々木「『空想トラベル』も、ツアーで全国を回ってると、各地でおいしい食べ物はたくさんあるし、観光できるところもいっぱいあるし、そういうのをライブきっかけで楽しんでもらえたらいいよねということで企画して。旅のしおりみたいなのを作っていて、たとえば僕らがよく行くラーメン屋さんにそれを持って行ったら、煮卵が1個サービスでもらえるとか(笑)。この間はドーナツ屋さんとコラボして、僕らの顔のドーナツが限定で販売されたり。もうとにかく楽しんでもらえたら良いなっていう思いなんです」

──公式サイトにはライブのいろはについて丁寧に説明があって、そして安全かつ健全・・・ということもあって親に紹介しやすく、親子で参戦する人が多いとか。

三浦「そうです。PTA公認です(笑)」

岡田「子どもについてきて、親のほうがハマるっていうパターンが結構あるみたいなんですよ」

佐々木「たまに物販とか立つとね、お母さんのほうがファンになっちゃって、娘より親のほうがめっちゃ買ってくみたいな。それで親子の会話が増えたりだとか、ドライブのときはいつも空想委員会かけてるとか、そういう声をいっぱい聞くようになって」

岡田「食卓での会話が増えたとかね(笑)。すっごくうれしい、ありがたいよね」

──お子さんの付き添いでライブハウスに行ってみたら、お客さんのライブマナーがすごく良くて、これなら子どもに行かせても安全だ、となるんですね。ライブにはお父さんと娘で参戦っていうパターンも多いそうですね。

三浦「完全に僕より年上の、サラリーマンの方とかスーツで仕事終わりにライブに来てくれたりして。みなさん結構アグレッシブで、MCの途中で『CD買ったよ~!』とか『わかるわかる~!』とか声が飛んできて、お父さんたちとコール&レスポンスしてます(笑)」

──しかも、お父さんたちの世代が三浦さんが書く歌詞にすごく共感するとか。空想委員会の曲は、三浦さん自身の体験や空想をもとに書いたラブソングが多いですが、昨年12月に発売されたシングル『色恋狂詩曲』も40代男性に響きそうな失恋ソングですね。

三浦「一度ちゃんとしなきゃダメだと目指してみたものの、己の限界を知るわけです。で、それからまた始まる、というのを書きたくて。歌詞は実体験、ほぼリアルですね。やっぱり何か起こらないと曲にならないので」

──今までの曲もすべてほぼ実体験だとか。そう考えると、三浦さん恋愛豊富ですよね。

三浦「いや、1回の恋って感じですね。1人の女の子で10曲くらい書けるんで(笑)」

佐々木「毎回取材のたびに言うんで、どんな女性なのかほんと会ってみたいですね(笑)」

──そしてこの『色恋狂詩曲』、ミュージックビデオ(MV)が話題になりましたね! 最近はMVのあるあるを集めた岡崎体育の『ミュージックビデオ』や、スマホをフルに活用したlyrical schoolの『RUN and RUN』などMVが話題になることが多いですが、パソコンで視聴すると「恋愛シミュレーションゲーム」として実際に遊ぶことができるという『色恋狂詩曲』もこれまで見たことない斬新なMVでした。

三浦「みんなゲーム好きですからね。珍しいってこともあって、再生回数がすごい伸びました。バンド仲間とかからもやったよとか反応があったりして」

岡田「音楽としてあくまであって、音楽と一緒にゲームが楽しめる。音楽をいろんな方法で楽しんでもらいたいっていうので取り組みました」

──冒頭で3人の女性の中から好きなキャラクターを選択。ストーリーの進行に合わせてデートの選択肢が複数出現して、20通り以上のエンディングが用意されてるとか。ハッピーエンドが12%しかないんですね。「また振られた!」「8回目でやっと結ばれた~」など体験した人の感想が続々とSNSに投稿されているのをよく見ます。振られると意地でもハッピーエンドになってやる!と思って繰り返し再生するので、もう脳内『色恋狂詩曲』のループでしたよ。

三浦「ある意味洗脳ですよね(笑)」

佐々木「僕らも全員やって1回振られて、また挑戦して・・・。ストーリーは(サポートドラム兼マネージャーの)テディさんが考えたのも結構採用されてるらしくて」

テディ「三浦くんがこれまでに書いた歌詞を片っ端から読んで、ネタを探してました。なので、空想委員会のファンなら思わずクスっと笑える仕掛けが散りばめられてます」

──この試みも、ロックとか空想委員会の音楽を聴いたことがない人に、MVをきっかけに初めて聴いてもらうって意味ではこれまでの空想委員会がやってきた試みと通じるなと思いました。そんなシングルも披露しているライブツアー『大歌の改新 第三期』がもうすぐ終盤です。大阪では1月20日に「BIGCAT」でWEAVERと対バンですね。

佐々木「僕らが良いなと思ったバンドを毎回呼んでます。WEAVERとは以前、Perfumeさん主催の『Perfume FES!!~三人祭~』で共演して、仲良くなって。やっぱりライブは出会いの場ですよね。なのでもっとたくさんの人に、ライブハウスに来てほしいですね。健全だよっていうのを伝えていきたい。なので、初めてのライブにはぜひ、空想委員会を!」

(Lmaga.jp)

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