「母の父」で見るジャパンカップ

 以前、ある調教師が「種牡馬として失敗した馬は、意外と母の父として活躍するんです」と話していた。真偽のほどは別として、自分のなかでその言葉が妙に引っ掛かって…。それを聞いて以降、馬柱を見るたびに思い出してしまう。

 基本的に、種牡馬として失敗した馬が“母の父”として活躍することはまれだ。前記の調教師が話していた「活躍」とはコンスタントなものではなく、突然変異的に出て大レースを勝つような馬のことを指すのだろう。

 そう考えれば、思い当たる馬がいる。例えば、90年代に国内史上最高の総額約44億円のシンジケートが組まれた“神の馬”ラムタラは、種牡馬として大失敗したものの、孫のヒルノダムールが07年の天皇賞・春を制覇。引退後は種牡馬入りを果たし、初年度産駒は来年デビュー予定だ。

 “史上最強のステイヤー”と呼ばれたメジロマックイーンも種牡馬としてはパッとしなかったが、母の父としてオルフェーヴルやゴールドシップを輩出。ステイゴールドとの組み合わせは“黄金配合”と呼ばれ、馬産地で人気を集めている。

 また現在、1000万条件で走っているストリートキャップ(牡3歳、美浦・斎藤誠)は“平成のアイドルホース”オグリキャップの孫。オグリもこれといった産駒を残すことはできなかったが、孫が新馬戦を勝ち上がったことで再び話題となった。たとえ種牡馬として結果を残せなかったとしても、応援していた馬の血が後世に残ることは喜ばしい。

 今なぜ“母の父”にスポットを当てているのかというと、29日に東京競馬場で行われる「第35回ジャパンカップ」に参戦する外国馬の血統がなかなか面白いからだ。今年は4頭がエントリー。イラプト(仏国)こそ、日本にマッチしそうなドバウィ(ミスタープロスペクター系)×母の父カーリアンという配合だが、ほかの3頭の母の父は日本になじみがあって興味深い。

 トリップトゥパリス(英国)の母の父は、00~01年に世界の競馬を席巻したファンタスティックライト。日本では00年ジャパンCでテイエムオペラオーとメイショウドトウに次ぐ3着だった馬、あるいは01年ドバイシーマクラシックでステイゴールドに差されて2着に敗れた馬、といった方が分かりやすいか。種牡馬としては07年に日本に輸入されて活躍が期待されたものの、これといった産駒が現れず大失敗。その後、11年に英国へ輸出された。

 ナイトフラワー(独国)の母の父は、これまた日本で大失敗したパントレセレブル。自身は97年のフランスダービーやパリ大賞典、凱旋門賞を制した名馬だが、日本の軽い芝が合わなかったのか、種牡馬としては全くいい子を出せなかった。また、イトウ(独国)の母の父タイガーヒルは、99年のサンクルー大賞典(仏国)でエルコンドルパサーの2着に好走したものの、同年のジャパンCではスペシャルウィークの10着に敗退。高速馬場に苦しみ、3番人気という高い支持に応えることができなかった。

 血統から外国勢を評価すれば劣勢と言わざるを得ないが、前記の通り“母の父”として意外なパワーを発揮する種牡馬がいることも確かだ。外国勢の優勝は05年のアルカセット以来、途絶えている。10年ぶりとなる勝利をかなえ、日本で祖父の威厳を取り戻せるか。熱い走りでレースを盛り上げてほしい。

(デイリースポーツ・松浦孝司)

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