札幌競馬の開催日数減に疑問の声

 夏競馬、真っ盛り。例年以上の暑さに少しバテ気味ではあるが、春のG1シリーズで疲労が蓄積した競馬関係者にとって、夏のローカル競馬は精神的にひと息つける時でもある。競走馬と同じで、人間も道中でひと息を入れなければ、恐らく年末の有馬記念まで体力が持たない。それを理由に、毎晩飲み過ぎている自分は反省しなければならないが-。

 さて本題。最近、競馬関係者やファンと話をしていると“夏のローカル開催”についての意見を多々聞く。特に多いのが「なぜ札幌の開催日数を減らしたのか?」という声。大都市・札幌で、昨年には立派な新スタンドがオープンしたにもかかわらず、今年は開催を2日間減らしたのだから疑問視する声があって当然だ。ネット上でも賛否両論が寄せられているという。

 期間短縮の一番の要因は、札幌開催の売り上げの低さだろう。他場に比べてフルゲートの数が少ない札幌(最大で芝16頭、ダート13頭)は必然的に出走頭数が少なく、1桁頭数のレースが1日に複数あることも少なくない。また夏場は下級条件のレースも多く、購買意欲の低さを指摘する声も多い。

 それに加え、札幌開催は“第3場”の立ち位置にあり、テレビや新聞の扱い(特に平場のレース)が地元紙以外では小さい。そのあたりは我々スポーツ紙としても今後の課題としなければならないが、人口約190万人という都市の規模を考えれば、やり方ひとつで中京開催レベルの売り上げにまで引き上げることが可能ではないか。改善の余地はあるはずだ。

 現場は期間短縮を反対する声が多い。まず第一に“競走馬”のことを考えた場合、競馬関係者はそろって「馬は暑さに弱い。涼しい環境の方がいいに決まっている」と口をそろえる。決して暑さが厳しい新潟や小倉の開催を否定しているわけではない。あくまでも問題視しているのは、札幌開催の期間短縮だ。

 次は“厩舎人”。以前の札幌は2開催16日間だったが、今年は2開催12日間に。こうなると、優先出走権が絡んでくる条件馬の扱いがかなり難しくなるという。開催序盤に勝つか、あるいは優先出走権を獲れれば後半戦に使えるメドが立つが、開催期間が短縮された今年は権利を逃した場合、レースの番組数が減ったため、再度札幌で使える保証がない。

 厩舎によっては馬とともに人ごと入れ替わるケースもある。某厩務員は「ウチの厩舎は、水曜の出走想定メンバー表を見てから動くからね。きょうまでは札幌でも、あすには馬と一緒に函館や栗東に移動することもある。調教師が狙った番組に使えないと判断すれば、いわば強制送還。仕方のないことだけど、体力的にこたえる」と嘆いていた。競馬ゲームなら簡単な作業でも、実際の現場は大変だ。先の予定を立てられない人も多い。

 あるベテラン騎手も期間短縮には大反対。いつもレースに乗っていて、札幌のスタンドを眺めながら「あれだけ客が入っているのだから、絶対に馬券は売れる」と感じているそうだ。「JRAは売り上げのことばかり気にするけど、どうなのかな。競馬は文化だと思うし、みんなで楽しむものじゃないの?札幌競馬は十分に根付いているし、馬にとっても涼しいところで調整できるのはいい。そんなに売り上げのことを言うのなら、(地方競馬の)大井とかを見習うべき。やり方ひとつで札幌は絶対に成功する」と断言する。

 力説は続く。「大井は攻めているからね。ファンサービスがすごいもの。コースの内馬場でバーベキューをやったり。札幌も大井みたいにすればいいんだよ。北海道にはおいしい食べ物もたくさんあるんだから、コースの真ん中にドカンとビアガーデンをつくってね。ビールを片手に、ゆったり競馬観戦なんていいじゃない。そういう努力をしないうちに安易に開催期間を減らすんだから、納得がいかない。目先のことだけではなく、10年、20年先を考えてほしいよね。もったいないよ」

 JRAも札幌競馬場内の“もいわテラス”でビアガーデンを開催したが、期間限定で、しかも時間が午後4~6時まで。評判は良かったと聞くが、大井と比較すると思い切りの悪さは否めない。一事が万事で、札幌という大都市が持つポテンシャルの高さを思えば、今の競馬界はそれを生かし切れていない気がする。主催者サイドが本気になれば、ドル箱開催に化ける可能性はあると思うのだが-。(デイリースポーツ・松浦孝司)

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