【ダービー】ユタカ復活!キズナでV5

 「日本ダービー・G1」(26日、東京)

 東京競馬場へ詰めかけた約14万人のファンが“ユタカコール”で祝福した。鮮やかな直線強襲で第80回のメモリアルレースを制したのは1番人気のキズナ。10年に生産されたサラブレッド7197頭の頂点に立った。オークスをメイショウマンボで制した弟・武幸四郎に続き、兄弟で2週連続クラシックVを決めた武豊は、8年ぶりの祭典での美酒。前人未到の5勝目を飾り復活を告げた名手は、父ディープインパクトでかなえられなかった凱旋門賞・仏G1(10月6日・ロンシャン)制覇を見据えた。

 耳をつんざくような大歓声が東京競馬場を包み込む。約14万人のファンの視線の先には、右手を上げてそれに応える武豊の笑顔があった。05年ディープインパクト以来8年ぶりの勝利で、自身の持つダービー最多勝記録を5勝に更新。ディープ産駒のキズナと果たしたVは、天才の完全復活を高らかに告げるものだった。

 「5回目の勝利ですけど、本当に本当にうれしい。ディープの子で格別です。この馬がまた僕をダービージョッキーにしてくれた。騎手人生でも大きなダービーでした」

 まさに人馬の“絆”でもぎ取った勝利だ。最内枠からスタートを切ると、自然と後ろに下げた。「とにかく慌てないようにと自分に言い聞かせた」。馬の力を信じて脚を温存した。直線で外に持ち出す際には前が狭くなるシーンも。懸命の左ステッキで馬群を割ったのは残り300メートルだった。

 「ゴーサインを出したら彼の走りになった。これで届かなければ仕方がないと思った。夢中で追いました」。そこからが圧巻だ。メンバー最速の上がり3F33秒5の末脚で急追。1完歩ごとに差を詰め、先に抜け出したエピファネイアを半馬身差でとらえたところが歓喜のゴールだった。

 苦しみ抜いた末のV5だけに喜びもひとしおだろう。競馬界の“顔”として常にトップを走ってきたが、10年の落馬負傷などの影響で、3年続けて年間の勝ち星が100勝を下回り、リーディングジョッキーの座を08年を最後に明け渡している。

 「ここ数年、成績が落ちて勝てずに苦しかった。ただ、自分を曲げずに一生懸命にやってきた。答えが出せて良かった。“中年の星”になれたかな」。44歳になった名手は、これまでと変わらぬユタカスマイルを浮かべながら「僕は帰ってきました!」と、ファンの前で堂々と復活を宣言した。

 デビュー2戦目までキズナの手綱を取り、落馬負傷で休養を余儀なくされた佐藤哲、苦しいときも変わらずに支えてくれたオーナーや調教師。全ての人と紡いだ熱い魂を胸に「人と人の絆があり、その絆を信じた結果、勝てた。キズナが夢をかなえてくれた。今度は彼を世界でNo.1の馬にしたい」と言い切った。

 次の目標は、06年に父ディープインパクトで参戦(3位入線→失格)して果たせなかった凱旋門賞制覇だ。「ディープで負けてから、いつかその子どもで、と思っていた。それが実現できればうれしい」。関係者、ファンの夢を乗せ、ユタカとキズナが世界へ羽ばたく。

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