今井雅之さん壮絶死 27日に容態悪化

 俳優の今井雅之さんが28日午前3時5分、大腸がんのため、都内の病院で死去した。54歳。所属事務所が同日、マスコミ各社へのファクスで明らかにした。葬儀は近親者のみの密葬で、今井さんの出身地・兵庫県内で執り行い、後日、お別れの会を設けるという。

 末期の大腸がん公表から約1カ月。舞台復帰を目指し壮絶な闘病生活を続けていた今井さんが、仕事への情熱を胸に抱いたまま天国へと旅立った。

 今井さんの容体が悪化したのは27日。関係者によると、抗がん剤治療を続けてきたものの、危篤状態となり、28日午前3時に妻と看護師長の姉ら家族にみとられ息を引き取った。今井さんは仕事復帰に向け、治療とリハビリに励んでいたが、ここ最近は寝たきり状態が続いていたという。

 仕事が生きる糧だった。14年に「ステージ4の大腸がん」と診断され、抗がん剤治療を続けてきた今井さんは今年4月21日、88年の初演からライフワークとしていた原作・脚本・主演舞台「THE WINDS OF GOD」の出演を断念。直後の会見では、安楽死も考えたことを明かしながら、「仕事が(生きる)モチベーション」と舞台復帰へ執念を燃やし続けた。

 今月1日から5日までの東京公演では連日、舞台あいさつに立った。やせ細った体にか細い声で、「役者としては体をよくして役者人生を充実できるようがんと闘う」と宣言していた。21日からの関西公演は、体調不良のため来場できないことをわびる肉声でのメッセージを流した。公演最後となる31日の沖縄での舞台あいさつを目指していたが、思いはかなわなかった。

 今井さんは、陸上自衛隊を経て法政大学に入学、卒業後に俳優としてデビューした異色の経歴を持つ。漫才コンビがタイムスリップして特攻隊員になる物語「THE WINDS-」は95年に国連本部で上演、映画化もされるなど27年続いた。

 今井さんが公の場に姿を見せたのは、7日に生出演されたTOKYO MX「バラいろダンディ」が最後となった。くしくも亡くなったこの日は、2週間の治療を経て番組復帰を予定した日だった。

 09年に初演した主演舞台「手をつないでかえろうよ」の映画版の撮影が今秋に控えていた今井さんは「秋までは寿命を持たせて」と願っていた。思いは届かなかったが、壮絶な闘病を続けながらも最後まで仕事への情熱を失うことはなかった。

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