【専門家の目】谷垣幹事長 頸髄損傷し最悪の場合は…傷ついた部分によって障害重く

 自民党の谷垣禎一幹事長が趣味のサイクリング中に転倒して頸髄(けいずい)を損傷し、手術を受けた。細田博之幹事長代行が26日に記者会見して明らかにし、退院の時期が見通せないことから幹事長交代も視野に入っているという。頸髄損傷について兵庫県芦屋市の「松本クリニック」松本浩彦院長は、傷つく場所や程度の違いで症状が大きく異なり、最悪の場合は胸から下が動かなくなることを指摘した。

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 背骨の中には「脊髄」という、脳から出てお尻の辺りまで、大きな神経の束が走っています。脊髄は手や足を動かしたり、痛みや温度などを感じたりする、神経のいちばん太いいわば「幹」で、この脊髄の最も脳に近い部分を「頸髄」といい、首の骨の中にあります。

 脊髄からはたくさんの神経がのび、頸髄からも頸神経とよばれる大切な神経が8対のびていて、それぞれが身体の運動や知覚を少しずつ分担しています。脊髄が傷つくと、そこから下にある神経が麻痺するため、体が動かなくなり、皮膚の感覚もなくなってしまいます。傷つく部分が、脳から近ければ近いほど麻痺する神経が多くなり、それだけ障害も重くなります。

 とくに頸髄の場合、傷つく場所や程度のほんの少しの違いで、症状が大きく異なります。それだけ脳神経の中枢にあるということですが、最悪の場合を説明しますと、完全に神経が切れた完全麻痺の状態になると、まず運動機能として、胸から下は動かすことができなくなります。立って歩くことも座ることもできず、呼吸するための神経が損傷すれば、自分で呼吸もできなくなります。知覚も消失するので、痛み、熱さ、冷たさなどの感覚も全くわかりません。排出に使う筋肉も麻痺しますので排せつも自力でできません。

 このように「頸髄損傷」といって、1つの病名でくくってしまうのは無理です。程度によって個人差が大きく、さまざまな症状があるからです。手術を受けたということですから、谷垣氏の場合、最悪の状態ではないと推測できますが、後に残る障害の程度や部位は全くわかりませんし、これから先、変化していく可能性もあります。

 6月に十二指腸潰瘍で亡くなった鳩山邦夫氏の時もそうでしたが、政治家が病気やケガの状況をマスコミに詳細に発表することはごくまれです。党の総裁まで務めた方ですから、正確な情報は今後もなかなか出ないと思います。大けがと闘う谷垣氏を一人の人間として応援する以外、われわれにはできないのではないでしょうか。

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