いくよさん逝く 相方くるよ感謝の涙

 1980年代の漫才ブームを支えた女性漫才コンビ「今いくよ・くるよ」の今いくよ(いま・いくよ、本名里谷正子=さとや・まさこ)さんが28日午後5時58分、胃がんのため、大阪府内の病院で死去した。67歳。京都市出身。29日、京都市内で家族、近親者らによる密葬形式で通夜が営まれ、約100人が参列した。最期をみとった相方の今くるよ(67)は「日本一の相方とやってこられてホンマに幸せでした」と涙した。告別式は30日で後日、大阪市内でお別れの会を開く予定。

 最愛の親友、相方への感謝の涙だった。「ありがとう、本当にありがとう。日本一の相方とやってこられて、ホンマにお礼を言いたい」。通夜の後、気丈に取材対応していたくるよだが、最後の最後に堰(せき)を切った。

 くるよによると、容体が変化したのは腹痛を訴えた約1週間前。鎮痛剤の服用で治まったが、医師に診てもらったところそのまま入院。亡くなる3日前に急変し、最後の2日間はくるよの「頑張りや!」の声掛けにも反応がなかった。最後は笑うように旅立っていったという。

 女性漫才コンビの筆頭格として第一線を走り続けたいくよさんは、最後まで芸人だった。26日朝、看護師の問いかけに対し「里谷正子、28歳です」と笑顔で答えて病室を和ませた。くるよが「ナイスギャグや!」と突っ込んだのが2人の最後の会話だった。

 いくよさんは70年、高校の同級生だったくるよとコンビ結成。細身のいくよさんと、ふくよかなくるよが互いの容姿や派手なファッションをネタにして「どやさ」などと掛け合うスタイルで人気を博した。

 いくよさんは厚化粧と濃いまつげがトレードマークだったが、棺(ひつぎ)の中でもいつものメークがほどこされた。闘病生活のために半年以上絶っていたビールとたばこ、好きなお菓子などがくるよの手で添えられた。

 病が判明したのは14年9月。胃がんと診断されて入院したが、手術はせずに抗がん剤治療を選択。3カ月の休養を経て、12月には舞台復帰。会見で「がんとは、これまで付き合った彼氏よりは長いお付き合いになりそう」とおどけるなど“芸人魂”を見せた。

 治療を続けながら、さまざまな仕事をこなした。テレビ番組では、入院中に歌手で俳優の福山雅治からお見舞いの花が届いたエピソードをうれしそうに披露していた。

 今月11日、大阪・なんばグランド花月での公演が最後の舞台となった。くるよによると、「鍛えなあかん」とウオーキングに励むなど、その後も再び舞台に立つことに意欲を見せていたという。胃がんを手術で克服した宮川大助・花子の宮川花子(59)が手術を提案すると「スケジュールがあって、6月くらいかな」と先を見据えていた。

 後輩の面倒見がよかったいくよ・くるよ。毎年3月3日には2人が中心となって、ベテランから若手まで女性芸人を集めて開く男子禁制の親睦会は、20年続く吉本興業内の恒例行事となっている。「他人の悪口を言わない。怒ったことがない。すばらしい相方」と、しみじみと思い返すくるよ。2人の間でもネタに関して口論になることはあっても、プライベートでケンカしたことはなかった。

 多くの先輩後輩や芸人仲間に愛されながら、突然旅立ったいくよさん。「私は大幸せでした。思い切って、まっすぐ天国に行っていただきたい。すばらしい、すばらしい人でした」。くるよの大きな目は涙と愛情であふれていた。

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