「９９」「ロザーナ」「アフリカ」などの大ヒット曲で知られる米ロックバンド、ＴＯＴＯが３月１８日に９年ぶりのオリジナルアルバム「ＴＯＴＯ　ＸIV～聖剣の絆」を日本先行発売する。オリジナルメンバーで米国を代表するギタリストの１人、スティーヴ・ルカサー（５７）がこのほど本紙の単独取材に応じ、アルバム制作の裏話を披露。音楽業界の現状についても熱弁を振るった。

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　－９年ぶりのアルバムを制作した経緯を教えてください。

　「バンドとしては、ニューアルバムを作るつもりはなかった。しばらく活動を休止していたけど、マイク（・ポーカロ）がＡＬＳ（筋萎縮性側索硬化症）を患って、彼の家族をサポートするために２０１０年にツアーを始めたんだ。（再始動のために）戻って来たメンバーはハイスクール時代からの旧友で、ずっと忘れていた素晴らしいエナジーが戻って来たのを感じた」

　（続けて）

　「ツアーはずっと続いて、３５周年のライブＤＶＤにまでつながったんだけど、当時のマネジャーがバンドの知らない契約を交わしていて。もう１枚スタジオアルバムを作るという…。作らざるを得なかったというのが本当のところだ。でも、作るからには素晴らしいＴＯＴＯのアルバムを作らないと、と、一生懸命骨身を削って作った」

　－若かった頃と比べて、楽曲を生み出すのは難しくありませんでしたか。

　「そんな（曲作りに苦労するような）ことはなくて、本当に久々に集まったメンバーなのに、若返りのマジックがすごく戻って来て、どんどんアイデアが湧いてきた。スティーブ・ポーカロとジェフ・ウィリアムスは完成した曲を持ってきたし、スティーブが『昔デヴィッド・ペイチが作った曲があった』と思い出して作ったのが「チャイナ・タウン」。１９７７年にもともとのアイデアを考えたものだ。他の曲はバンドが集まって、アイデアを出し合いながら作った」

　（続けて）

　「それをまとめる意味で大きく貢献したのが共同プロデューサーのＣＪ・ヴァンストン。ものすごく個性の強いメンバーだから、意見のぶつかり合いはすごい。それを中間の立場でとりまとめてくれた。新鮮なアイデアが出て、レコーディングはトントン拍子で進んでいった。使わなかった曲はほとんどない」

　－一つのジャンルに収まらない、ＴＯＴＯらしいアルバムになっていると思います。

　「本編の最後の曲『グレイト・エクスペクテーションズ』は、３曲分をまとめて１曲にした大作になっているんだ。ＴＯＴＯらしさが詰まっている。『チャイナタウン』はオールドスクールのＴＯＴＯ。より新しい面が出ているのは『ランニング・アウト・オブ・タイム』『ホーリー・ウォー』。『バーン』は非常にパワフルなロックソングだ」

　（続けて）

　「色んな表現があるので、アルバム１枚で一つの音楽の旅になっている。最近よく『アルバムは死んだ』『アルバムを全部聴く人なんていない』と言われるけど、そうは思わない。それはこのアルバムが証明している」

　－近年、音楽の聴かれ方が変わってきていて、曲単位でのインターネット配信が主流になっています。

　「インターネットでは違法配信が野放しになっている。アーティストがお金をもらっているなんてウソだ。僕は年に２００回ライブをやっていて、ライブは好きだけど、それだけやらなければいけないという側面もある」

　（続けて）

　「アルバムも今どきは宅録でできるとよく言われる。ＥＤＭ（エレクトロダンスミュージック）ならそれでもいいが、ピンク・フロイドの『狂気』『ザ・ウォール』やピーター・ガブリエルの『ＳＯ』－ＴＯＴＯもそうだが－は、宅録でできるレベルのものじゃない。当然お金もいる」

　（続けて）

　「アルバムを聴いている人は確かに少ない。いつもメールを見たりスマホを見たりしていれば当然、アルバムを全部聴く暇はない。色んなことを同時にやるようになっていて、音楽もマルチタスク（複数の作業を並行して行うこと）のＢＧＭになり下がっている」

　（続けて）

　「でも、その理由が、最近の人は集中力がないというのは違う。ろくでもない、同じような音楽ばかりかかっているからつまらないし、ずっと聴けない。テクノロジーで人間は進化しているのか？退化しているのではないかと思う。人間同士の関わりがすごく必要なのに、今はフェイスブックとかバーチャルなものが多い。テクノロジーももちろんいいが、人との関わりを忘れちゃいけないと思う」

　（続けて）

　「最近、コンサートでお客さんが裸眼で見ていなくて、動画をアップするためにずっとスマホを持っている。僕が今回、ラリー・カールトンと出演したブルーノートが好きなのは、それを禁止しているから。コンサートは見て楽しんでほしい。『愛はどこに行ってしまった？』と思う昨今だよ」