韓国野球、観客動員が右肩上がりのワケ

 近年、若者の人気が急上昇し、観客動員も右肩上がりの韓国プロ野球。今年もその勢いは続いているようだ。4月23日にKBO(韓国プロ野球委員会)が発表したデータによると、4月1日の開幕から23日までの91試合で観客動員数が100万人を突破したという。昨季より12試合早い達成だった。前年比としては9%の上昇に過ぎないが、サムスンが129%、ネクセンが80%とそれぞれ大幅なアップが目につく。試合内容もあるが、こうした観客の増加には新球場によるものという見方も強い。

 サムスンが今季、新たな本拠地とした『サムスンライオンズボールパーク』は、フィラデルフィア・フィリーズのシチズン・パークをモデルにしたとされる近代的な施設。上空から見ると8角形のデザインもユニークで、さすがサムスンの本拠地といった趣だ。これまでサムスンは、プロ発足の1982年から大邱市内の市営球場を使用していた。ただこの球場、当時から老朽化が激しく(開場は1948年)、選手からもケガの心配を訴えられるほどひどかった。スタンドもしかり。その後、紆余曲折あり時間を要したが、サムスングループと同市の共同出資でようやく誕生に至った。収容は約3万人。以前の市民球場は約1万4千人収容だったことを考慮すると、倍の収容力がある。

 ネクセンは韓国球界初のドーム球場『高尺スカイドーム』を本拠地にした。ソウルの西部でやや地の利に恵まれてはいないものの、話題性もあって飛躍的な動員数を示している。こちらも収容人員は約2万2千人程度だ。

 冒頭で「91試合で100万人突破」と記したが、平均すれば1万1288人。日本から見れば決して多い数字ではない。というのも韓国の球場は、おしなべて器が小さいのだ。ライオンズパークとスカイドームを除く、8球団の本拠地球場の収容人数を列記するとこうなる。

 ソウル・チャムシル(斗山・LG) 2万6千人

 仁川・文鶴(SK) 2万6千人

 水原(Kt) 2万人

 大田(ハンファ) 1万3千人

 光州KIAチャンピオンズフィールド 2万7千人

 釜山・サジク(ロッテ)2万6800人

 馬山(1万1千人)

 これは、多くが古い市営の総合運動公園にある球場施設を借り受ける形でしかプロ野球を開催できなかったことにも起因している。かつては親会社を含むプロ野球団という私企業が、「自前の球場」を持つことが認められていなかった時代もあったためだ。また球団経営自体も親会社、グループの宣伝媒体以上のものではなかった。

 しかしファンの急増により、インフラやファンサービスも疎かにはできなくなった。この10年というもの、各球団は市と折衝し、トイレの改修から、見やすいスタンドの増設まで、あらゆることに着手するようになった。ロッテの本拠地であるサジクでは、今季、20億ウォン超(約2億円)を投じて韓国初のLEDによる照明を設置している。韓国の球場インフラとファンサービスは、まさにトレンド? そんなことも観客増加を支えている要因なのだ。

 KBOの今季の目標動員数は800万人。近年は試合数の増加もあるが(ちなみに今季は1チーム144試合制。日本より1試合多い)、昨季は新記録となる736万人を動員した。今季は優勝候補とeわれたサムスン、NCなどが開幕スタートにつまずき、混沌としたシーズンを予想させる。そうなれば、目標の800万人突破も、決して夢ではない。

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