広島・一岡「僕は幸せ者」 万感ラスト三振締め 3連覇支えた剛腕、仲間の手で8度舞いプロ生活に別れ

 引退セレモニーでナインから胴上げされる一岡(撮影・田中太一)
 6回、島田を三振に仕留める一岡
 始球式に向かう(左から)一岡、次男・凌生くん、長男・大凱くん、三男・伊織くん、妻・紀美子さん
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 「広島東洋カープ5-6阪神タイガース」(1日、マツダスタジアム)

 今季限りで引退する広島・一岡竜司投手(32)が1日、マツダスタジアム内で会見を行った。巨人、広島で計12年間を過ごした右腕に涙はなく、晴れやかな表情で「僕は幸せ者」と感謝を述べた。試合では六回に登板、打者1人を三振に仕留め、現役最後のマウンドを飾った。今後は未定。3連覇を支えたリリーバーがプロ生活に終止符を打った。

 球場全体からの拍手と仲間の視線に、心が動いた。最後まで涙はない。ありったけの気持ちを込めて腕を振り、貫いた全力投球。「投球練習中に野手の皆さんが見守ってくれたので感動しました」。妻と3人の男の子、そして両親も見守る中、現役最終登板を三振で締めくくった。

 六回。新井監督から直接白球を渡され「グッとくるものがあった」と流れる時間をかみしめた。初球の145キロから全球直球の真剣勝負。「真っすぐが投げられなくなったら終わり」。プロ入り時からこだわり続けてきた生命線。最後は8球目の144キロで島田を見逃し三振に斬った。

 試合前の会見では「自分のストレートが投げられなくなった」と引退を決断した理由を挙げた。だが、やり残したことはないと胸を張れる。「後悔は不思議なぐらい、ない。ありがたい気持ちでいっぱい」と表情は澄み切っていた。17年からは2年連続で59試合に登板。連投の疲労よりも1軍で投げられる喜びが、常に上回った。

 印象的な登板は広島移籍1年目。2014年の春季日南キャンプで組まれた初の紅白戦だ。「チームに溶け込むために、1試合目は大事だなと。当時のレギュラークラスの人に投げた試合。10年間(広島で)お世話になった中で、ターニングポイントになった」。2回無安打5奪三振で猛アピール。独特の緊張感と、新天地で“爪痕”を残そうと必死に腕を振った時間は、今も心に刻まれている。

 最後は仲間の手で8度宙を舞った。「僕は幸せ者。頼もしい仲間たちばかりなので、遠くからだけど(CSに進むチームを)応援したい」。ナインとファンに愛された男が、笑顔で本拠地に別れを告げた。

 ◆広島・新井監督(一岡について)「まだまだ元気なボールを投げていた。カープのためにたくさん腕を振ってくれて、頑張ってくれて、優勝に貢献してくれた。普段はひかえめだが、マウンドに上がると芯の強さを感じさせる本当に素晴らしい投手でした」

 ◆一岡 竜司(いちおか・りゅうじ)1991年1月11日生まれ、32歳。福岡県出身。179センチ、87キロ。右投げ右打ち。投手。藤蔭高から沖データコンピュータ教育学院を経て、2011年度ドラフト3位で巨人入団。大竹のFA移籍の人的補償として13年オフに広島へ移籍。16~18年のリーグ3連覇をセットアッパーとして支えた。大瀬良、今村とともに「カピバラ3兄弟」としてもファンに親しまれた。プロ通算は290試合で17勝14敗7セーブ84ホールド、防御率2・76。

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