元広島・田中彰さんが来春にもドミニカへ カープアカデミー臨時コーチで直接指導心待ち
元広島内野手の田中彰さん(39)は今年1月からドミニカ共和国にあるカープアカデミーの臨時コーチを務めている。しかし、今年はコロナ禍で現地に足を運べず、日本からオンラインによる指導を行った。感染状況が落ち着けば、来春にも現地に渡って直接指導を行う予定で、「日本で活躍できるような長打力のある選手を育てたい」と、ドミニカ選手との対面を心待ちにしている。
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昨年までスコアラーを務めていた田中さんがカープアカデミーの臨時コーチに就任したのは今年1月。球団OBの古沢憲司さん(73)から業務を受け継いだ。「アカデミーは歴史がありますし、やりがいのある仕事。元々、指導者にも興味があったので、カープの未来のためにもいい選手を育てていきたい」と意気込みを語る。
ただ、新型コロナウイルスの影響でアカデミーは昨年4月から一時閉鎖しており、現在、約20人の在籍選手は個別で自主練習を行っている。田中さんもドミニカに足を運ぶことができず、練習動画などを送ってもらい、オンラインで指導を行ってきた。「選手たちもこういう状況でなかなか難しいところもあると思う。早く現地に行って教えたい」。感染状況が落ち着けば来春にもアカデミーの活動を再開し、田中さんも現地に渡って指導を行う予定だ。
指導する上で大切にしていることは言葉や文化の違いを理解しながら、一人一人と向き合うこと。「彼らの思いも尊重しながら、野球だけでなく、生活面でもある程度、きちんとやっていけるようにしたい。広島以外のチームに行っても人として成長してくれたらうれしい」と人間形成も重視している。
選手とコミュニケーションを図るため、現地の公用語であるスペイン語も勉強中。「向こうに行けば、日本人は自分一人だけ。通訳はいますけど、やるのは野球なので最後はジェスチャーになってくると思う」と笑う。「食べ物の好き嫌いはないので食事に困ることもないと思います。気温も暑い方が好きなので」と異国での生活も楽しみにしている。
現役時代はオリックスと広島でプレー。長打力のある大型内野手として期待は大きかったが、目立った成績は残せず2010年に引退。その後は球団に残り、スコアラーとして10年間、さまざまな角度からデータを収集、分析してきた。その経験を生かし、アカデミーでも綿密なデータに基づいた指導が期待されている。
今オフ、鈴木誠がメジャー挑戦を表明。新たに4番を任せられる選手を見つけることがチームの大きなテーマとなっている。「球団は長打力のある選手を求めている。アカデミーからも日本人を助けてくれるような選手が出てきてくれたらいいですね」と、大型野手の発掘と育成を目標に掲げた田中さん。一人でも多くの有望なドミニカンを広島に送り込み、チームに貢献できることを願っている。
(デイリースポーツ・赤尾慶太)
◆田中彰(たなか・あきら)1982年10月23日生まれ。東京都出身。現役時代は187センチ、86キロの内野手。創価高から法大を経て2004年度ドラフト5位でオリックスに入団。08年に山崎浩司との交換トレードで広島に移籍。広島では1試合の出場に終わり、10年のシーズン後に戦力外通告を受け、現役を引退。引退後は昨年までスコアラーを務めた。通算成績は13試合に出場、1安打、打率・063。
◆ドミニカカープアカデミー メジャーリーグのアカデミー制度を参考に、広島球団が90年11月にドミニカ共和国に開校。現在は4つのグランドを有し、室内練習場やトレーニングルーム、選手宿舎などを完備する。アカデミー出身の主な広島選手はチェコ、ペレス、ソリアーノ、バティスタ、メヒアら。現在はフランスアとコルニエルが在籍。



