丸、報われぬシリーズ1号 逆転弾も…「切り替えてやるしかない」
「日本シリーズ・第5戦、ソフトバンク5-4広島」(1日、ヤフオクドーム)
個人的な結果よりも勝敗が全て。本塁打よりも白星が欲しかった。広島・丸は足早に淡々と言葉を紡いだ。
「終わったことをくよくよしても仕方がない。明後日(3日)から気持ちを切り替えてやるしかない」。ソフトバンクに王手をかけられたが、まだ日本一へ可能性は残されている。不振から目覚めた大黒柱は前を向いた。
1点を追う五回2死二塁。モイネロの失投を逃さなかった。カウント1-1からの3球目。真ん中高めの149キロを振り抜いた。
「しっかり反応して打てた」。納得のスイングから放たれたライナーが、右翼スタンド最前列へ。16年の第6戦以来となる日本シリーズ通算2本目の一発は、価値ある逆転2ランとなった。
日本シリーズでは、この試合の2打席目まで18打数2安打、打率・111。第3戦では、シリーズワーストタイの1試合4三振を喫していた。
一塁を回ると、溜まった鬱憤(うっぷん)を晴らすようにほえた。マツダスタジアムのような大歓声が響く中、悠然とダイヤモンドを一周。「1本が出た、出ないというよりも、しっかり大事な場面で結果を出せるように頑張りたかった」。七回2死でも中前打を放って、今シリーズ初のマルチ安打。完全復活を感じさせた。
義理堅い男だ。リーグ優勝前の9月上旬。千葉経大付の恩師、松本監督を広島に招待した。宿泊は高級ホテルの最上階を用意し、一緒に食事をして近況を報告した。翌日は初めてマツダスタジアムに招待。恩返しを果たし、満足そうに笑った。
日本シリーズでも支えてくれるファンや恩人に、ようやく雄姿を見せた。ただ、本来の姿からすれば、まだ物足りない。逆転日本一へ-。丸の意地が見たい。





