倉、さよならヘッドスライディング 前代未聞!引退試合がノーゲームに

 「広島(降雨ノーゲーム)ヤクルト」(25日、マツダスタジアム)

 前代未聞の“引退試合”だ。今季限りで現役引退を発表している広島・倉義和捕手(41)=2軍バッテリーコーチ兼任=が、ヘッドスライディングで19年のプロ野球生活に終止符を打った。初回、9年ぶりに黒田とバッテリーを組み、打者1人と対峙(たいじ)。役目を終えたものの、降雨ノーゲームとなり、直後にナインに背中を押されて滑り込んだ。選手、ファンらの笑顔に包まれ、グラウンドを後にした。

 まさかの展開に涙はなかった。倉が見せたのは、最高の笑顔だった。喜びも悔しさも味わってきた19年のプロ野球人生。そのフィナーレは、驚きのヘッドスライディングだ。「僕らしくていい」。びしょぬれのユニホームに身を包みながら何度も白い歯がこぼれた。

 「黒田さんにやれと言われた。きょうしか見に来ることができない人もいる、と。せっかく来てもらってのノーゲーム。何か記憶に残ることができればいいと思った。ヘッドスライディング?こういう形は初めて」

 初回1死一、三塁で降雨中断。1時間20分の中断後に降雨ノーゲームが決まった。この日、2度目の出番が来た。グラウンドへ姿を見せた倉が、本塁付近で素振りをして一塁方向へ走りだした。手を振りながらゆっくりベースを一周すると、41歳の体にムチを打って!?頭から思いきり本塁へ滑り込んだ。スタンドは拍手喝采。ナインも手をたたいて奮闘をたたえた。

 新井が「倉さんがどうしても行かせてくれというものだから(笑)。いいものを見せてもらった」。黒田は「俺は見ていなかったから、もう一回やってくれと言ったんだけどね」と笑った。誰も描けなかったシナリオ。誠実な人柄で誰からも愛されてきた倉らしく、最後もチームメートにいじられまくった。

 引退の花道は黒田とともに飾った。「8番・捕手」でスタメン出場し、9年ぶりにバッテリーを組んだ。年齢を重ねても現役にこだわり続けたのは、黒田の存在があったから。「プロとしての心構えを教えてもらった人。メジャーから帰ってくるまでは絶対に現役でいようと思っていた」。坂口と対峙しストレートの四球。「僕が言うのも変だけど、強い球を投げられていた。以前と変わらずいい球でした」と、手に残る心地良い感触を心に刻んだ。

 26日に出場選手登録を抹消される。降雨ノーゲームとなったため、この日の“引退試合”は記録に残らない。それでも「いいんじゃないかな、僕らしくて。しんみりせず、最後は笑顔で終わりたかった」。喜びとともに、倉がユニホームを脱いだ。

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