【広島OB安仁屋宗八氏の祝辞】チーム一丸で勝ち取った優勝
「巨人4-6広島」(10日、東京ドーム)
広島カープがついに、ようやく、25年ぶりにリーグ優勝を手にした。12球団で最も遠ざかっていた頂点。就任2年目の緒方孝市監督(47)が7度、宙を舞った。
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年のせいではないだろう。涙が自然と流れた。なにせ25年ぶりの優勝だから。緒方監督をはじめコーチ、選手、裏方さんや球団関係者、カープに関わったみんなにありがとうと言いたい。松田オーナーはもちろん亡くなった先代オーナーも喜んでいるだろう。ワシをはじめOBも大喜びじゃ。
今年は春季キャンプに臨時コーチとして参加させてもらった。キャンプでは「あいさつと笑顔を忘れるな」と何度も言った。それがチームワークにつながると思ったから。
シーズン中、野村が内野手にミスが出てムッとした表情を見せたことがあった。同じ投手として気持ちは分かる。ただ、翌日「あんな顔をするな。“もう1回行くよ”と声をかけろ」と注意した。その後は味方が失策を犯しても声をかけていた。今季は攻撃陣が良かったが、野球は持ちつ持たれつの部分がある。その点ではチームが一つにまとまっていた。
1997年限りでユニホームを脱いで評論家になった。05年に現場に戻ったが、それ以外の年は開幕前の順位予想で「カープ優勝」と言ってきた。意地になった部分もあるし、優勝してほしいという願いもあった。信じてきてよかった。
思い返せば沖縄から広島に来て半世紀。言葉も違えば風習も違う。野球を辞めたら沖縄に帰るつもりでいた。
75年の初優勝時は阪神にいた。カープを見返そうと頑張ったが、最後はカープのユニホームで現役を終えたかった。ちょうど黒田や新井のように。現役を終えてコーチまでさせてもらい、今も野球に携わることができている。
ワシの人生はカープなくしてなかったこと。先輩や後輩に恵まれた。それだけにカープへの思いは強い。今はOBとしてじゃなく、一番のカープファンと思っている。
今季はチーム一丸で勝ち取った優勝。みんなで勝利の美酒に酔いしれてほしい。ただ、ここがゴールじゃない。キャンプ最終日に「日本一」と言った。カープファンの思いを成就してもらいたい。(広島カープOB会長、デイリースポーツ評論家)