マエケンで鯉20勝一番乗り!我慢3勝目

 「広島5‐2DeNA」(4日、マツダ)

 エースが、区切りの勝利へ導いた。広島・前田健太投手(26)が8回を3安打2失点の力投。初回に先頭打者本塁打を許したが、粘り強く投げて、逆転勝利を呼び込んだ。2位・阪神と並び、1998年以来16年ぶりとなる両リーグ20勝一番乗り。こいのぼりの5日・こどもの日を前に、鯉が単独首位をキープした。

 こん身の直球だった。前田は踏み出した左足を軸に1回転し、勢いよく右手でガッツポーズ。八回2死二塁。この日最後の98球目、多村を空振り三振に仕留めた瞬間だった。

 「調子は良くなかったが、何とか粘り強く投げられた。勝ち星が付いてホッとしています。投手にとって勝ち星は大きい。2人に付けてもらった」

 我慢の3勝目。お立ち台で一緒になった、一時逆転の2ランを打った松山と、勝ち越し打を放った木村に感謝した。

 初回、いきなり石川に先頭打者弾を許した。大入り3万1800人の観衆。大リーグ・レッドソックスの関係者も視察に訪れた。熱視線の中での失投。「だいぶこたえました。球場が盛り上がったのに、雰囲気を悪くしてしまった」。それでもエースは切り替えた。

 直球は150キロを超えず、宝刀のスライダーで空振り、見逃しを簡単に奪えない。三振も4つにとどまったが、カーブ、チェンジアップを巧みに交えて連打を許さなかった。九回は登板間隔が空いていたミコライオにマウンドを譲り、8回を3安打2失点。山内投手コーチは「使える球種が多いから、悪いなりにも投げられる」と評価した。

 野村監督は「調子の波は誰にでもある。調子が悪くても要所で抑えるのは、さすがエース」とねぎらった。そして両リーグ20勝一番乗りに、「3点差までなら打線が援護してくれる。試合を壊さないよう投手も頑張っている」と手応えを口にした。

 前田は2日、ロッテを相手にノーヒットノーランを達成した西武・岸の投球をテレビ観戦した。この日の相手DeNAには、自身も12年4月6日に同じ偉業を成し遂げている。

 刺激を受けそうなものだが「もう狙うつもりはない」とサラリ。「正直、ヒットを打たれたい場面もある。苦手な打者を2死無走者で迎えたい時もある。打線の巡り合わせを考えている」と、独自の投球観を話していた。

 この日の投球にも当てはまる。調子が悪いなりに抑え、勝利を呼び込んだ。張りを抱えた右肘も癒え、まさに大人の投球を披露した前田。こどもの日を前に「子どもたちにプロ野球に憧れを持ってもらえるようにしたい」と誓った。こいのぼりの季節。チームとともに、エースがさらなる上昇気流に乗る。

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