前田智1軍!関東から引退花道スタート

 関東のファンにお別れのあいさつだ。27日に今季限りでの現役引退を発表した広島・前田智徳外野手(42)=打撃コーチ補佐兼任=が、29日の巨人戦(東京ドーム)で急きょ出場選手登録されることが28日、分かった。これが関東地方で開催される今季の最終戦。出場は未定ながら、これまで熱い声援を送ってくれた関東の鯉党に、背番号「1」の最後の勇姿を見せる。

 午後6時47分広島発の新幹線に乗り込んだ。急きょ決まった東京入り。前田智は、スーツ姿でボストンバッグを手に乗車口をくぐった。

 当初は引退試合となる3日の中日戦(マツダ)を見据え、調整を進めていた。しかしこの日、大野練習場での練習後に予定の前倒しが決定。野村監督から電話を受け、1軍合流を告げられた。

 ヤクルト戦の試合前練習を終えた指揮官は「明日(29日)登録します。外すのはバリントン。東京にはお世話になった人もいるだろうしファンにお別れの意味も込めて」と昇格理由を説明した。

 試合出場は未定だ。だが、準備は進めてきた。この日は、約6時間の練習を行った。ランニングやノックをこなした後、打撃練習を開始。ティー打撃で体を温め、カーブマシンと打撃投手を相手に計88スイングした。

 納得のいく打撃ができなければ、いつもの“前田節”が全開だ。「いや~、今の(スイング)はない」、「あ~もう」。声を上げ悔しさをあらわにした。それでも4月23日のヤクルト戦(神宮)で骨折し、引退の引き金となった左手首を気にするそぶりはなし。時折、笑顔を見せながら力強くバットを振り込んだ。

 27日の引退発表後、結果を出さなければいけない重圧から解放された。打席に立てば約5カ月ぶりだ。いきなりの実戦にもかかわらず安打を期待される。それでも「そんなのはどうでもいいんです」。ただ楽しむことだけを考えている。

 2日からは本拠地での試合を控える。3日の中日戦は、自身の引退試合だ。引退発表を受け、残っていたチケット約1万枚が即座に完売。当日は背番号「1」の最後の勇姿を見届けようと、球場が真っ赤に染まることは必至だ。「売り切れ?困ったものです。最後の最後まで仕事をさせていただきます」。独特の言い回しで感謝の思いを口にした。

 孤高の天才を見られるのもあとわずか。まずは関東の鯉党の目に、その勇姿を焼き付ける。

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