清宮の陰に隠れたもう1人の和製ルース

遊学館に敗れ、1試合で甲子園を後にする九州学院・村上
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 “清宮フィーバー”に沸いた夏だった。大会中の一挙手一投足に注目を集めた早実・清宮幸太郎内野手(1年)の陰に隠れて、力を出し切れないまま1試合で甲子園を去った1年生4番打者がいた。

 もう1人の1年生スラッガーとは、九州学院(熊本)の4番・村上宗隆内野手である。184センチ、97キロの清宮に対して、村上も185センチ、86キロと体格に恵まれている。2人は同じ右投げ左打ちの一塁手。清宮が“和製ベーブ・ルース”なら、村上も一部で“肥後のベーブ・ルース”と呼ばれるなど共通点は多い。

 熊本大会で村上はチーム唯一の本塁打を放った。1回戦の初打席で満塁弾という衝撃の夏デビューだったこともあり、甲子園大会前には清宮と並び注目選手の1人となっていた。

 甲子園出場を決めてからは、何かと同学年の清宮と比較されることが多かった。村上は同じ質問を受けるたびに「今は全然、清宮君の方が上です」と答えていた。というのも、5月に行われた早実との練習試合で“直接対決”していた。

 村上が先、その後に清宮も一発を放った。村上から「いいバッティングするよね」と声を掛けると、清宮が「ありがとう」と答えたという。互いに面識があり、村上は清宮の打撃を自分の目で見た上で力を認めていたのだ。

 甲子園では清宮が全5試合でヒットを放ち、19打数9安打、打率・474。西東京大会ではノーアーチだったが、全国舞台で2本塁打9打点と勝負強さを発揮し、早実の4強入りに貢献した。

 九州学院は遊学館(石川)に逆転負けを喫して初戦敗退。地方大会では4割超の打率を残した村上だったが、遊学館のエース小孫の前に三ゴロ、三ゴロ、中飛、二ゴロの4打数無安打。一塁守備では勝ち越しを許す適時失策も犯した。

 試合後は「チャンスで4番として打てなかった。1本出ていれば流れが変わった。守備でも自分のエラーで1点あげてしまった」と悔しさをにじませた。華々しい全国デビューを飾った清宮とは対照的な結果に終わった。

 ある球団の九州地区担当スカウトは村上について「現時点では清宮君にかなわない」と明言し、「各コース、球種への対応力で清宮君の方が勝っている」と評価。それでも「スイングの強さ、打球を飛ばす力は村上君も決して負けていない」と付け加える。

 夏前に初めて村上を見た時の第一印象は「体が大きくて、本当に1年生なのか」というもので、打席での初球、2球目のファウルを見ただけで「ヘッドの走りが1年生とは思えない。バットを振る力がある」と潜在能力にほれ込んだ。「アベレージを求めて当てにいくのではなく、しっかり自分のスイングができるのは打者として魅力的」と解説する。

 初めての甲子園では全国クラスの投手に対応しきれず、結果を残せなかった。その対応力が現時点での清宮との決定的な差であるが「これから経験を積んでいけば埋められる」と説明。「いろんな投手と対戦して、対応力を磨いていけば、将来的には清宮君と十分勝負できる素材」と高く買っている。

 「あと2年間努力して、清宮君を追い越せるようにしたい」。村上は2回戦以降の清宮の大活躍を予言するかのように、自身の巻き返しを誓い、不完全燃焼で初めての甲子園を後にした。そして、清宮はU-18日本代表に1年生でただ1人選出され、そのまま国際舞台へと活躍の場を移そうとしている。

 新チームでの村上は中学時代に経験のある捕手で再スタート。打順も坂井宏安監督(58)が最重要視する3番に“昇格”している。九州の地で地道に経験を積み、一回りも二回りも成長した大器が、九州学院の攻守の要として甲子園に戻ってくる日を期待したい。(デイリースポーツ・斉藤章平)

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