郷愁誘うSLばんえつ物語~JR東日本
蒸気機関車C57形。スマートな車体から「貴婦人」の愛称で親しまれているSLは、新山口~津和野の「SLやまぐち号」の1号機が有名だが、新潟~会津若松を走る「SLばんえつ物語」号の180号機も99年4月の運転開始から16年目の秋を迎えた。片道126・2キロの走行距離は保存蒸気機関車としては異例の長さだ。“磐越の貴婦人”が引っ張る「森と水とロマン」の旅は郷愁を誘う感動の連続だった。
「ばんえつ物語」発車の30分以上前から、新潟駅3番ホームは熱気ムンムンだった。愛称“貴婦人”C57-180号機に多くの老若男女が群がる。「シューッ!」と噴き出す水蒸気と、モクモクと上る煙、黒光りした車体から伝わる熱気。改めてSLは“生き物”だと痛感する。
グイッと引っ張られる独特の感覚で発車。レールの音を響かせながら走る。開けた窓から入り込む風が心地よい。時折入り込む煙に車内が白っぽくなり、子どもたちが歓声を上げる。
「本日はご乗車誠にありがとうございますッ!」専用の制服を着た若い車掌さんが気合満点のあいさつ。笑顔で車内検札と「ばんえつ物語」の乗車手帳を配っていく。
新津から非電化単線の磐越西線に入る。勾配を貴婦人はゆっくりではあるが力強く登っていく。鉄橋付近では大勢の“撮り鉄”が待ち構えていた。車窓から阿賀野川が見えてきた。ラムネ色の川面でカヌーを楽しむ集団がこちらに向けてパドルを振っていた。
車内探検をしてみる。1号車は「オコジョ展望車」。森をイメージした車内は滑り台や塗り絵、紙芝居など、子どもたちが思い切り遊べる施設が整っていて、長旅でも飽きることがない。中間の4号車は大きな展望窓が並ぶ共有スペースになっており、懐かしい赤い円柱の郵便ポストが鎮座している。車内で配布される絵はがきを投かんすれば、「ばんえつ物語」の消印が押されて宛先に届く。最後尾の7号車は昨年登場したばかりのグリーン車。ゆったりとした3列シートは高級感にあふれ、切符の入手が困難な人気車両だ。
途中の津川駅で17分の停車。ここで貴婦人もひと休み。数人の作業員が石炭をならし、炭水車に給水、足回りに油を注入していく。新潟~会津若松間の片道で約3トンの石炭と30トンの水を使用する。点検作業を間近で見ることができるのも「ばんえつ物語」の魅力だ。
鉄橋を渡り、トンネルを抜け列車は福島県へ。景色も山から田園風景に変わってきた。ちょうど稲の収穫時期で黄金に輝く稲の原を突っ切るように列車は走る。沿線から野球少年が、ボンボンを持った女子中学生が、おじいちゃんやおばあちゃんまでもが元気いっぱいに手を振ってくれる。SLの現役時代を体験したことがない私でも、郷愁を感じなぜか少年時代を思い出した。
左手に磐梯山を見て終着の会津若松に。あっという間の4時間1分だった。沿線の紅葉はこれからが見ごろ。新幹線では絶対に味わえないC57「ばんえつ物語」の旅。行ってみる価値は十分にある。
☆SLばんえつ物語メモ
◆運転区間 新潟~会津若松間(126.2キロ)1往復
◆運転日 11月までの土日祝日(ただし11月14・15日は通常の青い12系客車を使用)
◆使用車両 C57型180号機+客車7両(普通車4両、展望車2両、グリーン車1両)の定員338人。
◆料金 全車座席指定で新潟~会津若松間・大人2790円、小人1390円。(グリーン車大人3940円、小人2800円)。乗車日の1カ月前からみどりの窓口などで発売。
◆問い合わせ JR東日本新潟支社HPで確認
