球児に聞く「育成と補強」

 【10月18日】

 右に福原忍。左に久保康友。阪神で一時代を築いたOBに挟まれながら小学校で運動会を観戦した。目で子どもたちの競技を追いながら、口ではいつの間にかタイガースの話題…

 阪神間で暮らしていると、気づけば公私がこんがらがるような境遇に身を置くことがちょいちょいある。

 「野球に対しても組織に関しても、考え方とか、思いを巡らせるレベルが常に周りの上をいくと思うんですよ」

 クラス対抗リレーの声援が響く観戦席で僕の左側からそんな言葉が聞こえた。あまり私的な会話を書くと怒られそうだけど、同じ「松坂世代」としてそのトップランナーに敬意を抱く久保は「藤川球児」をそんなふうに評した。確かにそれは、この2年間、虎将球児を見てきてよく分かった。

 CS敗退の一夜明け、昼過ぎに「オーナー報告」の取材で阪神電鉄本社へ向かいながら、ふと、前述の久保の言葉が浮かんできた。

 「常に周りの上をいく」球児はこの4連敗の直後に、どんな様相でオーナーにシーズンの報告を行うのか。どんな面持ちでその後の会見に臨むのか。

 阪神オーナー秦雅夫とのやり取りは僕らの見えない応接室で行うので分からない。が、会見場に姿を見せた球児は穏やかだった。ユニホームを纏った143+4試合の戦場では見せることのなかった温顔で言葉を紡いだ。

 会見を一通り聞いて、感じた。

 来季のチーム作りに専心する球児の視界に「DeNAに敗れたこの悔しさを晴らす」という景色はきっとない。

 その2歩先、巨大戦力ソフトバンクを倒すために阪神はどうあるべきか。照準はそこしかないように映った。

 仮にいまの阪神が日本シリーズに出れば、ホークスと互角以上に渡り合えるだろうか。「まだまだ足りない」と、球児は感じているはずだ。パの王者を凌駕しなければ昨年の雪辱は晴らせないわけだが、じゃ、どうするのか。

 オーナーと共に「日本一の組織をつくる」ために尽力することを誓ったという。ならば…。この場で球児に確かめておきたくなった。

 「来年日本一になる」ためのチーム作りをする。その前提に立つと、編成も現状維持というわけにはいかなくなる。この2年間を経て「育成と補強」について考え方に変化はあったか。  僕の問いかけに球児は答えた。

 「今年レフトのところで補強しなかったのは、どうしてもそこを競争させたかったというか、その枠を空けておきたかったというのはありました。高寺も昨年出てきて、前川も出てきて、中川も出てきて、立石も入団する中でポジションが全部空いていない…。ショートしか(競争で)空いてないという補強は果たしてチームのためになるんだろうか?というところで全体の中の決断として、なしで(いこうと)」

 ここからが本題。じゃ、来季は…

 「来年に関してどうかは分からないですけど…」

 この続きは次回。球児の言葉を紹介しながら、ドラフトを絡めて僕の捉え方を書いてみたい。=敬称略=

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