釈迦力な姿を見た休日
【7月17日】
マツダスタジアムでカープの練習を見ていると、矢野雅哉が打撃練習のあと帽子をとってヘッドコーチ藤井彰人に挨拶していた。この目礼の理由を後に知って何だかもやもやした。
要は「1軍を離れる」旨だったわけだけど、カープの関係者に聞けば、一部週刊誌で報じられたいわゆる「ゾンビたばこ」の件で球団本部長が矢野の登録抹消の判断を下したという。元カープ選手に「ゾンビ-」を譲渡したとされ起訴された人物とホテルの一室で一緒にいる写真も掲載されたのだとか。同本部長は、矢野が指定薬物を使用した事実は「確認できていない」としながらも、「売人と呼ばれる人と密室にいること自体が強い疑念を抱く状況なので、私としてはそういう選手を1軍のグラウンドでプレーさせるのは抵抗がある」と話したそうだ。
この措置を了承したという監督の新井貴浩は内心どんな思いなのか。野球の枠外、プレーの枠外、オフ・ザ・フィールドの疑念で選手が戦列を離れる…。これほど、つらく、しんどいことはないだろう。今ここで、それら疑念や球団の対応にあれこれ書く気にはなれない。ただ、20数年前のカープ、新人時代の新井を取材した古株の記者にとってもやるせなく悲しいニュースだし、一日も早くカープの選手、そしてカープファンが「野球に没頭」できる日常を取り戻せることを願うばかりだ。
カープといえば、僕が担当した時代から猛練習が旗印の球団である。当時は今の時代では考えられないような、文字通り血の滲むハードワークで力をつけ、個が育った史実がある。今回の週刊誌報道で世間の赤ヘルに対する印象があらぬ方向で滞ることは、元担当として心が痛むばかりだ。
さて、9連戦の4つ目は、鯉キラー才木浩人の好投に打撃陣が応えた阪神が優位にゲームを進める展開になったが、主演の才木が六回にきっちり犠打を決めたシーンを見てカープの伝統を思い出した。こう書けば、意味が分からないかもしれないが、ここからは勝ち負けを離れ、「カープらしい」姿を目撃した先週の話を書く。
6日、月曜日のことだ。阪神は7日からの巨人3連戦に備えた移動日だったが、前日5日のカープ戦で犠打のミスが目立ったこともあり、球児が選手にバント練習を指示。凡事徹底に心血を注いだわけだが、実はこの同じ日、カープの2軍から阪神球団に連絡が入り、SGLの使用許可申請があった。
当初予定にはなかったが、阪神はこのイレギュラーを快諾。若鯉たちは敵地の新施設を拝借し、休日返上で朝からバットを振りまくった。更に「カープらしかった」ことは、炎天下、尼崎市内の宿舎から片道30分の距離を全員徒歩でバットを手にSGLまで往復したことだ。そこには38歳秋山翔吾の姿も…。実に清清しい光景だった。
カープの今季スローガンは「SHAKARIKI(しゃかりき)」。漢字で書けば釈迦力。仏教用語でもある。一心、懸命に取り組む様を愚直に続けることで伝統は紡がれる。古い担当としてそう信じている。=敬称略=
