3球種の好ブロッキング
【7月11日】
ヤクルト監督の池山隆寛は拍手でナインを出迎えていた。森下翔太の一打で決着がついたサヨナラゲームは、しかし、森下に打点はつかなかった。決勝点は敵失によってもたらされた。
バックホームを狙ったレフト山野辺翔が森下の打球をはじいた。サヨナラ敗戦の燕だったが、指揮官はじめ、ナインもベンチを出て山野辺を労っていた。そんないいシーンを記者席から眺めた後、一塁側のベンチ裏へ急いだ。
この夜スタメン復帰し、九回にヒットを放った近本光司、本塁打の佐藤輝明、好投の伊藤将司、そして森下らヒーローは複数いたけれど、限りある当スペースで誰か一人を称えるとなれば…この人に話を聞きたくなった。
「それを見ていてくれたのは、やっている側としてもうれしいですよ」
クラブハウスへ引き揚げる梅野隆太郎が足を止めてそう言った。
聞きたかったのは八回の守り。
無死満塁のピンチで工藤泰成を好リードした背番号2のブロッキングに惹かれた。中でも、深掘りしたかったのは、セデーニョへのそれだ。
岩田幸宏を投ゴロに仕留め、なお1死満塁の窮地だった。3番の助っ人を5球で料理、三振に仕留めたが、そのうち3球がワンバウンドだった。
しかも、そのワンバンの球種は3種類。直球、フォーク、カットボール。梅ちゃんに確かめたかったのは、どのワンバンが最も難しいのか。記者席からモニターのスローで見ても、引っかけ気味の直球のワンバンを逆シンでストップしたミットさばきには痺れた。
やっぱり直球、しかも161キロのワンバンが一番難しそう…。
そう問えば、梅野は言う。
「そうですね。まっすぐも、どこにきてもいいような待ち方をしていたので、ああいう反応ができたと思います。基本通りに(ミットを)下から上に…。準備がないと、下から上にいけなくて、足も使えないので…。目立たないことですけど、一番自分の中では良かったかな、と。粘りきった裏にああいうプレー…そういう視点で見てもらえていたのは、うれしいです」
野球にミスはつきものだが、あの戦況で梅野が工藤のワンバンを1球でもそらしていればこの勝利はなかったかもしれない。振り返れば、あの回は佐藤輝明の失策で広がったピンチでもあった。それをバッテリー含め全員でカバーしたサヨナラは価値がある。
この日、4強をかけたサッカーW杯でスペインに敗れたベルギーは、監督のルディ・ガルシアがこんなふうに敗戦の弁を語っていた。
「スペインのようなチームに対してミスは許されません。若い世代にとっては学習になったと思います」
ベルギーは正GKらにケガ人が出たが、結果として代わりに出場したGKのミスをスペインが突いて決勝ゴールが生まれた格好だ。
甲子園は互いにミスが出たが、ミスを許さない強さ、ミスをカバーする強さという見方でいえば、この夜は虎が燕を上回った。立役者は好セーブ連発の背番号2。圧巻だった。=敬称略=
