衰えない36歳の「反応」

 【6月27日】

 アリソン・ベッカーという選手を野球ファンはご存じだろうか。虎の新助っ人、ではない。サッカーW杯北中米大会の決勝Tで日本代表の壁になるであろうブラジル代表の守護神である。

 イングランドプレミアリーグ・リバプールに所属する世界最高峰のGK。そういわれて久しいアリソンだけど、彼の年齢を聞いて時の流れを感じる。33歳。彼を若い頃から知るだけに、もうそんなトシか!と驚いてしまう。

 ブラジルのグループリーグ3試合を全てDAZNで見たが、アリソンの反射、反応は素晴らしい。20代の頃と比べれば、本人の中で衰えはあるんだろうけど、素人目には分からない。分かるようならセレソンの先発メンバーに選ばれるはずもないか…。ちなみに、「奇跡の指先」と話題の日本守護神の鈴木彩艶は23歳である。今大会は「神セーブ」を連発するが、彼がこの先10年間、33歳まで全盛期の反応、反射神経を保てるかどうかは分からない。

 野球とサッカーを単純比較するのはナンセンスだけど、W杯で39歳の長友佑都や39歳のリオネル・メッシを見ていると、こちらの世界でも、どうしてもベテランに目がいってしまう。

 この日のマツダスタジアムでは30代の選手が何人かオーダー表に名を連ねた。スタメンで両軍最年長はカープの菊池涼介。この人も若い。反射、反応がまだまだ若い。36歳?ルーキーの頃から知るけれど、アンチエイジングに長けたアスリートだと思う。

 虎目線でいえば梅雨空同様モヤモヤしたゲームになった。カープの爽やかな新鋭に主役を演じられてしまった格好だ。ヒーローは4安打をかっ飛ばした26歳の名原典彦だったが、1番の彼を渋く演出し、決定機を欠いたゲームを「カープのもの」にしたのは、2番の菊池だった。

 同点の八回、先頭名原がヒットで出ると、菊池が村上頌樹のカットボールを一発で殺した。名原を二塁へ送り、この走者に決勝のホームを踏まれてしまった。名手の好反射はグラブさばきだけではない。猛虎がここから夏場に向けてスカッと抜け出すためにも、見倣いたいのは菊池のこの反応。バットを寝かせたときの確実性である。初回にも一発でバントを決められたが、村上の球を初球で仕留めるのは簡単じゃないと思う。

 いい仕事をされてしまった。

 試合後、一塁のダッグアウトでそんなふうに菊池にぶつけてみた。

 「2番に入る以上、バント、エンドラン、右打ち。そういう準備は毎日していますので…。積み重ねてきたものもあるし、バントは自信をもってできていますよ。名原があれだけ打っていたし、きょうは自分はそういう役目だろうなと思っていたので。サインが出る前から準備はできていましたしね」

 26歳と36歳の1、2番コンビが厄介に思えるゲームになった。かつて「タナキク」には散々やられた猛虎だけれど、「ナバキク」とか新たな愛称で売り出されるのもキツい。名原のガッツポーズは、ほほえましく見られるくらいにとどめておきたい。=敬称略=

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