「記事見たよ」からの覚醒
【2月8日】
日本ハムと阪神の球団幹部がエナジックスタジアム名護のバックネット裏ブースで親交を深めていた。ちょうど新庄剛志と坂本誠志郎がグラウンドでグータッチを交わした昼前のころだ。
日本ハムチーム統括本部長の吉村浩と阪神球団本部長の嶌村聡が歓談…それ自体、特異な光景ではないけれど、会話の中身はやはり気になる。かつて阪神球団の総務で献身した吉村だが、かれこれ日本ハムの要職に就いて長い人だから親交というよりは旧交か…。それはともかく、この両軍が何かと縁深いのは吉村の存在と無関係でないことは分かる。もちろんポジ要素で。
今年初の対外試合はゲーム前からせわしなかった。藤川球児と島本浩也が握手するなど、あちこちで虎とハムが礼を交わす。伏見寅威と島本のトレードには驚かされたが、前向きな取引は大いにウィンウィンを期待する。
人的補償やトレードで北海道へ籍を移した選手が息を吹き返すドラマは見慣れた光景だ。田中正義、水谷瞬、齋藤友貴哉…。新庄ハムの「再生工場」には目を見張る。中でも粋なドラマは2対2の交換トレードで中日から移籍した郡司裕也の覚醒ぶりだ。この日、寒空の名護をのぞけば、朝から郡司が三塁でノックを受けていた。彼が中日でくすぶっていた頃、ウエスタン・リーグで凡打する場面をよく見た。仙台育英の4番捕手として甲子園で放った夏の本塁打は記憶に新しい。慶大時代の三冠王も鮮烈だっただけにもったいない…そう思いながら見ていた。
のし上がるきっかけは二年前のここ、すべては名護から始まった。清宮幸太郎が先乗り自主トレで左足を捻挫。キャンプイン直前で離脱すると、空いた三塁に「前のめり」になった。「チャンスがあれば…」。報道陣にそんな趣旨の発言をすると、コメントを目にしたビッグボスから声が掛かった。
「記事見たよ。明日からサードやってみよっか」
迎えた2月10日の紅白戦、コーチの内野用グラブを借りて初めてサードを守った捕手が第1打席でいきなり二塁打を放ち、新庄の心を鷲摑みにした。
あれから2年。ボスは26年開幕の4番を公言済みだ。昨秋のファン感謝祭で「4番サード郡司!」。サプライズ発表し、球団幹部をも驚かせた。この日の出場はなかったが、溌剌とする姿に中日時代の陰りはまるでなかった。
さて、藤川阪神2年目の「初陣」をどう見るか。球児は「全体というのは見ていない」と言った。つまり個。分かりやすかったのは浜田太貴の一発だけど、敵将の目に留まったのは捕手経由で覚醒に挑む中川勇斗だ。「彼は変化球に対してピタッととまって右に強いのも打てる」と新庄が絶賛。昨年はサードにも挑戦し、「試合に出られるならどこでもやる」と話す中川ははや5年目…。ん?ちょっと待って。ボスが褒めてもダメですよ。22歳の前のめりな姿勢は球児が称揚しているはずだし、覚醒は阪神で遂げるので。勇斗クン、やりたいポジションは全て言ったほうがいい。「記事見たよ」から激変する野球人生もあるので。=敬称略=
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