数をやる文化がない今
【12月2日】
誰かひとり挙げてほしい。
他球団のファーム関係者に「来シーズン有望な若虎は誰か」と聞けば、おもしろいように皆さん口をそろえる。
「百崎がいい」
いつから?
「春先から」
百崎の何がいいのか。
「右方向ヘ長打を打てる」「インコースをさばける」「まっすぐに強い」
守備は?
「ボールへの入り方」「俊敏性」
藤川球児が「来春の1軍キャンプに呼びたいメンバー」を挙げたのは先月の安芸キャンプでのこと。その中に百崎蒼生の名前が挙がったわけだが、あらためて「他己評価」を取材すれば、ウエスタン・リーグ3球団のベンチからその将来性を高く買われる選手だった。
ちなみに阪神投手への評価を聞けば早川太貴の名が多く挙がったが、きょうは野手に焦点を当てて書いてみる。
来春2月、沖縄宜野座のグラウンドで百崎が「内野戦争」に加わっていることを想像してみる。虎将の目が光る中で百崎がキラキラッと輝くためにはどうすればいいのか。
分かりやすいのは、やはり打撃である。フリーバッティングのサク越えやヒット性の本数ではなく、まず紅白戦や対外試合で数字を残せるかどうか。
このシーズンオフ、ソフトバンクや広島、中日…他球団のファーム関係者とねっこり話をする中で、ほぼ同じ論調で僕の言い分は見事に論破された。
今は「投高打低」だから若いバッターにとっては厳しいご時世になった。
こちらがそんなふうに言えば…
「何言ってるんですか。逆です。他が打たないんだから、ちょっと打ったら目立つんですよ」
ほう…。しかし、それが難しい。他より「ちょっと多く打つ」ために、百崎はどうすればいいのか。
旧知のソフトバンク関係者は「練習するのみです」と笑う。そんなこと、僕でも言える。しかし、ここからが本題。この方も、また、旧知の広島のファーム関係者も同じことを強調する。
「今は数をやる文化がない」
彼ら曰く…最近は「映像を見て形をまねたら、できた気になる」「倣ったら、できた気になる」選手が多くなってきたのだとか。
だから、そうじゃない者…つまり、数をこなす少数派の選手は、それだけで他を凌駕しやすいというのだ。
「バッティングピッチャーの球をミスショットする。来た球を打ち返せない。打球が打撃ケージを出ない。そういう選手がひと昔前より多くなった」
なるほど。しかし、それだけ言われても、ああそうなんだ…としか。
じゃ、最近の若い打者で「数をこなして大成した選手」の代表格って?
これも皆さん口をそろえる。
確かに、その選手、ファーム時代にこんなことを言っていた気がする。
「バットを振る量は誰にも負けないつもりでやっています」
小園海斗。今年のセ・リーグ首位打者である。=敬称略=
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