05年に聞いた潜在的な何か

 【3月12日】

 幕張といえば霧である。雨でも嵐でもない。日本シリーズ史上初の濃霧コールドゲーム。19年前の珍事をリアルタイムで知らないファンも増えた。僕にはつい最近のことのように思える。

 05年のセパ頂上決戦は千葉で幕を開け、甲子園で閉幕した。まさかの4連敗。4戦のスコアは計33対…しゃくに障るから書かない。

 ボビー・バレンタイン率いるロッテは、パ・リーグ2位からプレーオフの快進撃で決戦に駒を進めた。一方の岡田阪神はシーズン終了後2週間以上、17日間も試合から遠ざかり(こんなの日本シリーズじゃない…と筆者は未だ思う)その影響が懸念されていた。

 初戦は七回で1-10。このゲームを取材した僕は「霧に邪魔された」と高を括(くく)っていたが、第2戦も大敗(0-10)。「さあ、甲子園で3ついこ」なんて言いながら帰阪したが、そのままズルズル…。当初から岡田は特に打撃面の実戦間隔(空白)を案じていたが、その通りになった。

 しかし、あの屈辱から18年の時を経て見事に日本一を取るのだから、岡田はドラマティックな指導者だと思う。

 さてさて、どうした9連敗?

 いや、どうでもいい。こんなこと書けば炎上するかもだけど、ことさら数字を取り上げて騒がんでも…。だって24年シーズンの公式記録に1ミリも影響ない〈調整マッチ〉だから。逆に今9連勝していたほうが気持ち悪い。

 でも、しかし、そんなこと言っても心配なんだもん!と仰る読者のためにそれらしく遠因を書いてみる。

 05年のシリーズの惨敗は、攻撃の主軸が〈戦犯〉とされたわけだが、僕はその一人、金本知憲と「4連敗」の翌日に食事へ出かけた。西宮・苦楽園の料理店で焼酎を飲みながら、アニキはロッテとの4試合を振り返り、自省を込めて敗因を語った。このスペースにはとても書けないが、要約すれば「ナメていた…」。いや、この書き方は僕の解釈だし、正確じゃないかもしれない。が、「油断」や「スキ」「驕り」ともまた違うメンタル的な何か…。

 「潜在意識」を言葉にするのは難しい。あの年、ぶっちぎりでセを制した矜持はV戦士たちの中に確かにあったと思う。相手はパの2位。いける…。

 もちろん、いざフィールドに立てばいつだって全員100%。だけど、人の心の奥にある何か邪魔ものによって100%のそれが削がれてしまう。

 そういえば、金本は引退後に言っていた。自らを「ビビりだった」と。つまり…「怖さ」を知っているということ。「怖さ」を拭うために練習する。それでも、潜在的な何かをすべて排除できるほど完璧な人間はいない。

 オープン戦…。

 たかがとは言わないが、潜在意識の中に必ずある。これはホントに文字で表現しづらいが、なくはないものだと思う。気が抜けたプレー…ではない。気持ちは入っている。でも、その入り方は潜在的に公式戦とは異なる。

 幕張の霧を知る知将はスイッチを入れる日を決めている。そこから連覇へ向けた船は動き出す。=敬称略=

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