新しいリーダーのDNA

 【1月5日】

 年賀式の挨拶を終えたタイガース新球団社長の粟井一夫と話をさせてもらった。さぞ、心を痛めているだろう…そう思っていたので心中を察しながら、信じ難い「1・1」について聞いてみた。

 「本当にびっくりしました。珠洲(すず)とか輪島もたまに遊びに行ったりしたところですし…」

 金沢大出身の粟井である。元日に飛び込んできた痛ましい映像は他人ごとではなかった。能登半島にある奥様の実家は倒壊こそ免れたが、屋内は「ぐちゃぐちゃ」になったそうだ。珠洲市長が「市内の6000世帯のうち9割が全壊またはほぼ全壊」と語っていた通りで、その他も甚大な被害があった輪島市や能登町では依然自治体が全体状況を把握できないまま。能登へ里帰りしていた粟井の親族も何とか大阪まで帰ってきたばかり。昨年末大役に任命された新社長は「第2の故郷」に思いを馳せながら仕事始めに臨んでいた。

 「2」を大切に-。7月に60歳になる粟井が、球団職員、報道陣を前に強調したのはそんな話だ。

 「今年還暦です。人生2回目の出発ということで頑張って参りたいんですけれども、連覇を目指すということで、今年は『2』という数字にこだわっていきたい」

 意図する「2」は「2番目の」ではなく、「go on」。続ける。引き続く-である。

 「あらためて、これを…」

 粟井は肩書の変わった新しい名刺を差し出したが、僕がこの方と初めて名刺交換したのは、球団常務取締役に就任した10年前。南信男元球団社長の紹介で挨拶させてもらったわけだが、以来、様々な節目で話を聞かせてもらう中で、思った。次代のタイガースを担う社長になるべき人だと。一ライターが偉そうに…を承知で書いているが本音だ。一見温和そうに見えるが、スイッチの入れ所を知るリーダーであり、「続ける」ために鬼になれる器があると見る。粟井は言う。

 「先ほどの挨拶ではそこまで言いませんでしたが、私が一番しないといけないことは(球団内で)人を育てること。岡田監督も一緒だと思うんですよ。監督が『次』考えてはることは、ずっと勝ち続けることと、『次』(=後継)を作るということ。監督と相談しながら、2~3年先はどうしていくんだという話をね…」

 勝手にこじつけの見解を綴るけれど、粟井のキャリアを見ればリーダーの資質が浮かぶのだ。

 出身高校は、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎や、元ダウンタウンマネジャーで現吉本興業取締役の藤原寛を輩出した大阪・三国丘高。そして、出身大の金沢大といえば、その前身第四高等学校出身に巨人軍の創設者・正力松太郎がいる。きっと、DNAは…。

 それはそうと、新社長は我々メディアとどう付き合うのか。

 「こちらは嘘は言いません。取材に基づいて書いていただく分には何も言いません。が、嘘を書かれたときは怒ります」

 でしょうね…。新しいリーダーとはそんな人だ。=敬称略=

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