私の世話が一番大変
【10月12日】
羽生善治が自身のX(旧ツイッター)でこんなふうに呟いた。
「継続した努力、卓越したセンス、モチベーション、体力、時の運、すべてが合致した前人未到の金字塔だと思います」
全8冠制覇した藤井聡太への祝福コメントである。羽生といえばご存じ、将棋の元7冠制覇者であり、つまり、自身を超えた若き巨星を最大限称えたわけだが、この文言「努力。センス。モチベーション。体力。運」は、すべての成功者の条件とも重なる。
長らく破られなかった「羽生善治の壁」だけど、何を隠そう僕は「羽生7冠」達成の瞬間に立ちあった取材者の一人である。
あれは、1996年2月14日。山口県豊浦(現在の下関市)のホテル「マリンピアくろい」で第45期王将戦七番勝負第4局が開催され、羽生が史上初の偉業を達成。翌朝のデイリースポーツは1~3面を割いて、前人未到の「羽生7冠」を報じた。歴史的な日がバレンタインデーと重なったこともあって婚約者・畠田理恵(当時女優で現在の奥様)の存在もクローズアップされ、羽生が「(7冠達成を)報告しました」と、対局後の彼女への電話を照れながら明かしたこともよく覚えている。
いっぽう、あの日、本紙の4面に追いやられた阪神ネタは、新庄剛志がチョコレート60個、桧山進次郎が20個、ファンから宿舎へ届けられたという平和なネタが載っていたわけだが…。こんな話を書いていると、前述の羽生コメントに勝手に追記したくなる。
努力。センス。モチベーション。体力。運…と、もう一つ。成功の条件は「恋人やパートナーの存在」では??21歳の藤井8冠にカノジョがいるかどうかはさておき僕の知るプロアスリートの成功者は、今も昔も例外なく最高の理解者が傍らにいる(た)。
このオフも結婚報道がいくつか出るだろうけど、独身で成績が伴う選手だって更に高みを目指すために伴侶は不可欠な存在になる。
そういえば、大山悠輔に「ホームの利」の視点で奥様のことを聞いたことがあった。
シーズン中、自宅へ帰って一番助けられていることって何かな?食事でも何でもいいけど?
そんなふうに聞けば…
「僕にどんなことがあっても、何も変えないでいてくれることですかね。いつも通りというか…」
パートナーのそんなスタンスが主砲の成績を支えていたのかと思えば、感謝を伝えたくなる。
そういえば昨年、テレビ朝日系『徹子の部屋』に出演した羽生善治は、理恵夫人について「多分、私の世話が一番大変だと思いますよ」と照れていた。ほら、羽生将棋の勲章の裏には「努力」「センス」…だけではなかったでしょ?
さて、CSファイナルステージを初めてホーム甲子園で戦う阪神は、この上ないアドバンテージを味方に日本シリーズを見据える。今季ホームゲームの勝率は・662(ビジターは同・571)。猛虎のポストシーズン進撃を僕は確信している。=敬称略=
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