強みを理解する強さ
【6月8日】
仙台といえば?
うまいものが沢さんある。お酒も美味しい。青葉城址も秋保温泉も好きだ。しかし、真っ先に浮かぶのは12年前の残像。津波の爪痕が色濃く残ったあの景色である。
仙台空港から市街へ向かう車窓に惨状が広がった11年5月の宮城遠征。当時楽天監督は10年まで阪神SDを務めた星野仙一だった。移動日に阪神の主力選手が被災地を慰問し、仮設住宅で暮らす子どもたちと交流。思えばあの頃の小学生はもう成人しているのか。時の移ろいは早い。そんなことを考えながら、ふと思う。
もしかしたら…あの時代の楽天で指揮をとっていたのは、闘将じゃなかったかもしれない。
東日本大震災の2年前、楽天編成部長の三村敏之が仙台市内の病院で急逝した。61歳。
06年から09年まで楽天を率いた野村克也の後は三村が監督を担う予定だった。のちにそれを知って「三村楽天を見たかった…」の思いが未だにある。
三村といえば、90年代のカープ監督時代に大変お世話になった。金本知憲とともに座敷で食事をご一緒させてもらった思い出も…。葬儀で亡きがらを拝んだ時、若々しさゆえいたたまれなかった。
三村が編成部長だった08年のドラフト6位、辛島航はもう32歳になった。この夜、マウンドの左腕を眺め、その緩急の術中にはまった阪神打線がいつ彼を攻略するのか待っていた。楽天ファンには申しわけないが、伊藤将司と辛島の投手戦など予想はしなかった。先頭の近本光司がヒットで出た初回を見れば、きょうもいける。そう感じた虎党も多かったはずだ。
サヨナラで歓喜する楽天ナインの輪で小郷裕哉が泣いてた。自らの落球が逆転を招いただけに、自責の念と救われた思いが混在し、一気に溢れ出たのだろうか。小郷といえば18年ドラフトの7巡目で指名された俊足の外野手。昨季10試合出場の彼は5年目にして出場機会を増やし、勝負の年を迎えている。前夜は2安打。この日は先制の足がかりをつくるヒット、走塁…そして2点目の犠飛。自身のストロングを生かす走攻で仕事を果たしていた。が、終盤に守で落とし穴が待っていたわけだ。
三村は生前の著書『「超二流」のススメ』(アスリート)のなかで「超二流とは自分を知り、物事の本質を理解して、自分を生かす方法に工夫を加えられる人」と綴っている。辛島は「自分を知っている」選手だし、また、この3試合を見るにつけ、小郷もそのひとりだと感じる。「超二流」という言葉を使ったのは野村克也も同じで、自身の著書で「(超二流は)自らの強み長所と弱点を理解して強みを活かせるように頭を使う選手のことだろう。そういう選手がたくさんいるチームは間違いなく強い」と書いていた。今季苦しむ楽天だが、今の阪神に勝ち越すのだから今後勝機はあると感じる。
仙台で負け越した虎だけど、自らの強みを知り理解する男、原口文仁と糸原健斗がきょう札幌で合流する。 =敬称略=
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