誠也の穴は埋めない

 【4月10日】

 残念ながら完全試合を取材したことはないけれど、ノーヒットノーランは何度かある。僕が初めてそれを見たのは、この日甲子園の三塁ベンチで指揮を執ったカープ佐々岡真司のそれだった。

 あれは99年の快挙だったんだけど、同年のカープは5位。前年も5位、翌年も5位。つまり弱かった。それも長きにわたり、98年から15年連続Bクラス…暗黒時代の虎がかわいく見える?大低迷期に突入して間もないころだった。

 そんな時代を知る佐々岡だから強くない時代の戦い方を知っているのかもしれない。ん?強くない?そんなこと書いたらカープファンに怒られるか。というか、何を隠そう当欄が今シーズン優勝予想を立てたチームがカープ…何度も書けば、今度は虎党に怒られる。

 それはさておき、なぜ僕がカープがAクラス、それも頂点を目指せると書いたか。以前その理由を書いたので詳しくは省くけれど、要は、あの鈴木誠也が去ったカープだから…である。カープファンからすれば、誠也が海を渡った喪失感は半端なかったと思うし、当然、チームを預かる佐々岡にとってそれ以上の苦痛はなかったと察する。カープは誠也の穴をどう埋める気なのか。誰もが注目した佐々岡のマネジメントをプロ野球ファンは今どう見ているだろう。

 誠也は唯一無二の選手。一発もあり、率も残せて、勝負強い…いやぁ、どう考えても難しい。というか、無理なのだ。じゃ、佐々岡はどうしたか。「誠也の穴を埋めよう」なんて、ハナから思わなかったのだ。

 発想の転換である。

 「打ち勝とう」と思わなければいい-。これが敵将の思考。

 ちょっと待って。誠也の代わりの4番、R・マクブルームが打ったじゃないか。確かにこの日は彼の決勝弾に泣いた。でも、ご存じ?今年のカープの総本塁打数を。

 4本目です。誠也がいたら1人で打っているかもしれない。

 阪神は同9本だから半数以下…佐々岡が打ち勝とうを思わない野球を目指すのも、うなずける。

 その象徴的な存在が、この日も甲子園のセンターを守っていた。 上本崇司である。彼は内外野どこでもこなすユーティリティーなんていわれるけれど、カープ首脳にいわせれば、彼の外野守備は秀逸。リーグ屈指だという。誠也が抜けた外野の一角を佐々岡は上本に任せる。相手より1点多く取って「守り勝とう」。そんな野球に最もフィットする男こそ上本であり、また彼もその期待に応え、首脳陣の想定以上に打力でも貢献している。意外な男が…そう思う虎党も多いかもしれないが、見事にハマっている。

 我らが阪神が明日から2勝1敗ペースで勝ってゆくために、矢野燿大のマネジメントに注目している。カープが「誠也の穴」を嘆いても仕方ないように、阪神だって「過ぎた連敗」を愚痴っても始まらない。この先どんな野球をし、リカバリーするのか。その指針をファンも見たい。近いうちにこの続きを書こうと思う。=敬称略=

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