巨人が特別じゃない

 【10月5日】

 「燃える闘魂」アントニオ猪木を応援したことはなかった。古舘伊知郎が実況する新日本プロレスがゴールデンタイムに生中継されていた時代、猪木は国民的英雄だった。けれど応援はしなかった。

 正規軍に反旗を翻した維新軍の長州力がカッコよく、今で言う推しだったから。ヒール長州が猪木を倒す日が必ずやってくる。子供心に自分が維新の一員になった気分でそんな野望を抱いていた。

 あれから数十年。先ごろ長州のツイッターに「猪木を見舞う」呟きが猪木との2ショット写真とともに投稿されていた。

 「一人の人間として胸が熱くなりました」-。

 長州の言葉で記されていた。

 闘病でやせ細った燃える闘魂を見るにつけ、猪木さん、頑張れ…こちらも胸が熱くなった。

 巨人、猪木、ハムエッグ(ちょっと違うな…)の80年代から、巨人を応援したことは一度もなかった。虎党だった親の影響も大きかったし、弱くても背中を押したくなる、説明のつかない魅力が阪神にあったから、当然、巨人は猪木以上の敵だった。

 あれから時を経てこの仕事に就き、幸運にも03、05年と阪神Vを取材した。この両年ともガッツリ他力本願を強いられることはなかったので「巨人頑張れ」なんて状況はなかった。それが、今…。

 ヤクルトと巨人が相まみえたこの夜である。火曜からの3日間、虎の命運をうらなう神宮のSGから目が離せない…だから、巨人頑張れ…いや、そうじゃない。猪木も巨人も応援してこなかった当方が、ここにきて原サンを応援することはない。いやいや、そんなことはもう言ってられないのか。

 実はこの日、僕はツイッターで「初めて巨人を応援することになる火曜日」と投稿した。すると、「死んでも、読売の応援だけはせぇへん」など、お叱りの(?)リプライをいただいた。

 だから、フォロワーの皆さんに聞いてみた。巨人を「応援する」という表現をどう感じるか?

 「巨人を応援する-は、虎党としてはありえない」

 「(阪神が)優勝することが絶対目標で、現状そんな巨人を応援できないとか言ってられない」

 「別に巨人が特別じゃないし、阪神のためになるなら(巨人を)応援するのは、全く気になりません」

 などなど、反応は様々だった。

 さて、僕はどう表現しようか。

 佐藤輝明が打った。もう何打席ぶりかなんてどうでもいい。辛く長いトンネルを抜けた怪物が値千金のタイムリーを放ち、長らく勝てなかった青柳晃洋を援護した。

 つまり、これだ。前半戦をけん引した青柳、そして輝をどこかで不安視する自分がいた。だから、よそが気になる。週末のヤクルト戦が不安で仕方ないから、今だ。巨人を応援しなくちゃ…僕の思考はチキンだ。ヤクルトは強い。もう腹をくくるしかないのだ。「他力本願興味なし。自力で勝ち取るのみ」。そんな呟きがストンと落ちた横浜の夜である。=敬称略=

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