「モチ会見」から学ぶこと
【7月5日】
満を持してといおうか、メル・ロハス・ジュニアが昇格した。先週末、広島でのことだ。起爆剤としての期待感もあっただろう。僕も楽しみにしていた。いよいよ、本領発揮のときがきた、と。
イヤな流れを払拭するべく、ロハスの必死さは伝わってきた。けれど、金曜日の初戦は序盤に試合が壊れてしまって空回り、伊藤将司が踏ん張った土曜日も…日曜日は代打でHランプを灯したが、打率は依然1割に満たない。3連戦を通して大きく息を吐いてしまうシーンが何度もあった。
思えば、あの日もマツダスタジアムだった。ときは19年。2年前の9月である。
あれは耳を疑った。
「本人の方からモチベーションが上がらないとあり、帰阪させました」-。
当時の球団広報課長・新田慎也が大勢のメディアに囲まれ、冒頭そう説明したのだ。
え~~っ?
僕は新田の横でメモを取りながら、思わずそう漏らした。
「あのようなコメントを発表するのはつらいです、正直…。ソラーテ的にも心苦しいですし、チーム、球団的にも、もちろん、心苦しいですから…」
あの年の秋だったか。新田は確かそんなことを話していた。
〈事件〉を振り返れば…
7月に途中加入し、セクシーフィーバーを巻き起こしたY・ソラーテは広島戦に臨むため1軍に合流した。が、マツダスタジアムへ着いて間もなく異変が起こった。
三塁側ロッカールームで矢野燿大、野手コーチ、球団幹部とソラーテが話し合いの場を持ったものの、新助っ人はその夜の広島戦で「ベンチスタート」だったことに納得いかず、終始目はうつろ。試合へ臨む態度ではないと判断した首脳陣が断を下したのだ。
発端を記せば、ソラーテは広島駅前のチーム宿舎に合流後、野手ミーティングに於いて自身がスタメンではないことを知った。
「なぜだ?だったら、俺はなぜきょうここに呼ばれたんだ?」
そんな類の言葉を漏らしたという元メジャーのプライドはすぐに修復できるものではなかった。マツダへ向かうチームバスに乗ったものの意気消沈。約15分間の車中でも事態は好転せず、とんぼ返りで広島を後に…。広報が前代未聞の会見を行うことになったのだ。
ちなみに、あのとき、翌日のソラーテスタメンは決まっていた。だったら、もっとやり方はなかったか。例えば、しかるべき担当者が言い方を変え、ソラーテの気持ちをうまく乗せてあげるとか…いや、きっと部外者には分からない事情があったのだろう。
外国人は「戦力」にもなれば、「お荷物」にもなりうることは、球史を紐解けばよく分かる。
とりわけ今季は助っ人が鍵を握るシーズンである。取材の限り、今の阪神は、通訳しかり、スタッフしかり、助っ人のケアがうまいと聞く。いい意味でおだてる。テンションを上げる。アゲアゲでいこう。首位なんだし。=敬称略=