なぜ、晋太郎なのか

 【3月12日】

 矢野燿大はなぜ藤浪晋太郎を開幕投手に指名したのか。このアンサーを探している。取材規制があるので…いや、どうだろう。この類は、僕が矢野に問うても「実は…」とは返してこないだろう。

 何年か経って、もしかしたら、矢野が還暦を迎えた頃なら答えてくれるか…なんて考えながら甲子園のマウンドを眺めている。

 この日投げ合った虎・獅子の開幕投手はともに甲子園のV腕。そして森友哉がいる。懐かしさでいえば、藤浪のインステップもそうか。大阪桐蔭監督の西谷浩一が当時「大きく直さなかった」という左足の踏み込みが、9年経ったいま思い返される。

 山川穂高の腰はおおむね引けていた。右打者の外いっぱいに決まれば被打のにおいがしない。同じく右打者の外崎修汰が外にワンバウンドするスプリットを空振り。直球がきている証しに見える。

 スイッチ打者の1番・金子侑司から、左、左、左、右、左、右、右、右、左と並んだ山賊打線を二回以降まともにスイングさせなかった。そんな試合を見ながら少し気になったので、オープン戦の対左右打者の被打率を調べてみた。

 対左打者・227

 対右打者・143

 ちなみに、キャリア最多14勝を挙げた15年の公式戦は… 

 対左打者・241

 対右打者・203

 一時はインステップ矯正に専心した藤浪だけど、今は再びインステップが有効になったか。「打者が怖がる荒々しさを残したかったので」。そんな西谷の言葉がやはりよみがえるのだ。

 ぬかるむマウンド気にしながらそれでも二回以降は打球が外野へ飛ばなかった。オッサン記者がエラそうに激励すれば、もう任せたよ…のひと言である。

 藤浪が開幕のマウンドにあがることで西勇輝が週アタマの火曜日に登板できる。そうすれば、3、4月の巨人戦、広島戦はいずれもカードの初戦を西に託せる。矢野はそんな計算ありきで晋太郎を開幕投手に指名したのだろうか。

 全く違うと僕は思っている。

 いうまでもなく開幕投手とは特別なものであり、指揮官が大役を指名すれば、すなわち、その投手を軸にこの一年を戦っていくメッセージを発したことになる。チームにも、もちろんファンにも。

 「あいつの成長とチームの日本一、また強いタイガースをつくるという意味も含め、あいつを指名した」。指揮官はそんなふうに語っていた。つまり、晋太郎の世代で阪神の黄金期を築き上げてくれ-そんな意図だと信じる。取材抜きでは書かないし、また書き散らかす案件でもない。勝負の3年目を晋太郎に託したい。矢野の英断をそんな認識で捉えている。

 そして一つ確かなことを書けば開幕投手とは、ただ素晴らしい球を投げる人間だから選ばれるものではない。仲間の信頼を勝ち取った者が一年間その背中でチームを引っ張る。晋太郎がそれにふさわしい男だから、矢野が託した。僕はそう思う。=敬称略=

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