さよならは言わない
【11月11日】
オリックスが能見篤史の獲得調査に動いている。取材の限りを書けば、確度の高い情報…というか事実であり、個人的な思いを記せば、能見が関西の球団で残りの野球人生を全うできればいいな…。
もし、オリックス能見が誕生すれば、何年後か彼がユニホームを脱ぐとき、京セラドームで引退セレモニーが行われるのだろうか。そうなったとき、是非とも、阪神球団にお願いしたいことがある。
関西両球団で協力して能見の花道を用意してあげてほしい。
先走って筆が暴走している?
その通り、〈確信犯〉で書いておりますので。
前例にないとか、ああだこうだできない理由を並べるのではなく阪神ファンのために実現してほしい。だって、能見は藤川球児と同様に、阪神ファンの宝だから。
例えそれが能見の希望でなくとも、当欄はそう書き続ける。
想定外のシーズンだけど、まさか、今季最終戦でタテジマ最後の能見に手を振るとは思ってもみなかった。積もる話、思いの丈は、彼の新天地が正式に決まったときあらためて当欄で…。
言いたくない「さよなら」を言わなければならない男は、能見だけじゃない。同じく今季限りでタテジマを脱ぐ上本博紀である。グラウンドに姿を現すことはなかったが、この日、彼は甲子園へ来ていた。球団、チーム、関係各所へ挨拶する為に。誰のせいでもないけれど、やるせない思いが募る。上本についても、行き先が決まったとき、この欄で目いっぱい…。
そして、もうひとり。
惜別と感謝の思いを届けたい男がいる。
「誰に遠慮することなく、風さんが感じたこと、思ったことを自由に書いてください」
当欄を始めるにあたり、そんなエールをくれた福留孝介である。
残念ながら、タテジマ最後の福留を見ることは叶わなかった。聞けば、福留はこう言って〈1軍昇格〉の打診を断ったという。
「僕はいいので、若い選手の出場機会を優先してください」
色んな思いが彼の胸中に混在していたかもしれない。けれど、それらを詮索しても仕方ない。
実は……福留と会ってきた。
芦屋市内で話してきた。
恨み節なんて一つも語らなかった。福留が僕に語ったのは、若い選手への思い。こいつは楽しみ。あいつはもっとやれる。もっともっとやらなきゃダメ…そんな話をずっと聞かせてくれた。彼らとの「別れ」は寂しそうだったけれど逞(たくま)しくなった彼らとの再会を楽しみにしていた。
まだやれるから、やる。
福留が現役にこだわる理由はシンプルだ。できれば阪神で終われたら…彼の本心はそこにあったと思う。でも…いや、もういい。
福留孝介は最後に「大切な人」へ届けたい思いを僕に伝えた。
「良いときも、悪いときも、変わらず大きな声援をおくってくれた阪神ファンの方に伝えたい。本当にありがとうございました…」=敬称略=