阪神タイガースの良心

 【10月20日】

 自宅近くをウオーキングすればよく阪神の元球団社長をお見掛けする。ご近所なんだろうけど、詳しい居所は分からない。今春亡くなった元阪神オーナー手塚昌利と同期だというから、御年90歳か。

 三好一彦という名を聞けば、オールドファンならよくご存じだと思う。1990年の異動で球団社長に就任し、98年の退任まで特に環境、施設面の改善に尽力されたと聞く。僕が阪神取材に関わったのは00年からだから、三好時代を知らない。散歩中お声掛けして昔話を伺いたいところだけど、いきなりそれも失礼だよな…なんて思いながらいつもやり過ごす。

 なぜ、三好の話を書くかといえば、今般のゴタゴタを憂うから。

 なぜ、阪神のゴタゴタを憂うと三好の話を書きたくなるか。

 それは、阪神球団や阪神電鉄本社の取材で、「三好さんはタイガースの良心」とかねて聞いてきたからである。

 「三好さんは85年の吉田阪神を作った立役者だよ。マスコミが村山監督待望論で村山人気を求めたんやけど、野球をよく知る三好さんが裏で動いて吉田監督を誕生させた。岡田監督も大好きで、元球団社長の肩書で神戸後援会の発起人になってもらったしな。顔は怖いが、話好き。取材に行けば、いろいろ話してくれた。でも、秘密事項や、球団の不利になるようなことには口が固かったな…」

 当時の虎番で現デイリースポーツ代表取締役社長・改発博明に聞けば、そんなふうに懐かしむ。

 「電鉄とタイガースは本来、全くの畑違い。灘高、神戸大で野球部だった三好さんは、電鉄経営ではなく、タイガースと野球を愛した人だから『タイガースの良心』と言われるんよ」

 学生時代野球人だった改発は何だか嬉しそうに三好を語るのだ。

 三好が阪神球団社長を退いて20余年。暗黒時代の真っ只中を生きた人だけど、球団OBとして、コロナ余波で社長が〈解任〉された今年のタイガースに何を思うか。三好本人にそれを確かめない以上分からないが、きっと「心配してくださっている」-現球団幹部に聞けば、そんなふうに語るのだ。

 藤川球児という至宝がタテジマを脱ぐ特別な年である。虎党がどんな心で球児を送り出したいか。この夜、甲子園に響いた惜しみない拍手を聞けば分かる。お家騒動のさなか??ほんまによそう。

 確かにコロナ禍で阪神は続けざまにつまづいた。SNS等でバッシングも受けている。こんな窮地だからこそ「オール阪神」で乗り越えたいところだが、当欄で再三触れているように一部OBが足を引っ張っている。かつて球団の要職に身を置いた方々がすべて三好のように穏やかに、温かく、後進を見守っていただけないものか。しょうもない〈背信行為〉は、見ていて恥ずかしい限りである。

 黒歴史を振り返れば、三好が球団社長に就任する2年前(1988年)、当時の球団代表が自殺に追い込まれた悪夢が刻まれる。僕からすればつい最近に思える惨事だ。続きは次回。=敬称略=

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