何度も聞いた「剛が万全なら…」

 【10月2日】

 やっぱり、きょうは西岡剛のことを書こうと思う。

 夕方5時半、球団からマスコミ各社へ一通のメールが届いた。

 阪神タイガースは、西岡剛選手(34)に対して、来季の契約を結ばないことを伝えましたのでお知らせします。以上。

 いつもこの無機質な一文がすべて…分かってはいるけれど、その対象がスターであればあるほど、プロ野球界の非情さを知る。

 公式アナウンスよりずっと前にファンはその現実を知ることになった。西岡は、10月1日に通達された「戦力外」の報告を自身のインスタグラムで発信し、長文にありったけの感謝をのせた。

 僕は広島へ向かう新幹線のぞみの車中でインスタを読んだ。彼はもう広島には来ないのか…そう思いながらマツダスタジアムへ着くと、球場で真っ先に姿を見掛けた選手が背番号5だった。通路で対面すると、西岡は穏やかな笑みを浮かべながら、近寄ってきた。

 「こんな形にしてしまって…。すみませんでした」

 いや、全然…。伝える言葉が見つからず、とっさに頭を下げた。

 西岡との思い出は僅かだけど、インパクトが残る。その一つが、15年の年始。自主トレ先・大阪ガスグラウンドでのやりとりだ。

 球団が設定した取材対応日に同グラウンドへ足を運ぶと、西岡は我々メディアの前で言った。

 「僕らの自主トレは本当にキツいんで。取材対応はきょうだけですけど、もし確かめたければ、いつでも見に来てください」

 そこまで言うなら…と、仕事休みの朝、覗きに行ってみた。メディア不在のグラウンドで、合同自主トレのメンバー中田翔、西川遥輝らはみんな肩で息をしていた。もちろん、リーダー西岡も…。さらに室内練習場のバッティング風景は、ちょっと怖くなったほど。誰も喋らない。笑みもない。あるのはスイング時の荒い息づかい。ミスショットすれば、絶叫。

 「僕、ほかは知らないんですけど、風さん、この時期にこんな自主トレ、見たことあります?」

 西岡から逆取材された。なぜ、キャンプ前にあそこまで追い込んでいたのか。西岡はロッテ時代、最年少盗塁王に始まり、首位打者や最多安打、そして日本代表…輝かしい実績を積み重ねてきたわけだが、それが猛練習の成果であったことをよく知るからである。

 「取材ノート」でありながら、ここからは半分臆測で書くことを許してもらいたい。西岡が阪神で結果を残せなかったのは、故障、いや重傷に苛まれたことが全てだったように思う。グラウンドでは全身全霊。その信念は貫いたが、どうしても事故がよぎる。マックスで肉体を駆使する怖さ…五体が反射的にそれを拒むジレンマがいつもつきまとったのではないか。

 そして最後に…ここからは取材に基づいて。金本知憲はあなたのプレースタイルが大好きだった。「剛が万全なら…」。この言葉を何度聞いたことか。復活を遂げた西岡剛と甲子園で逢える日を楽しみに待ちたい。=敬称略=

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