梅野が年表を刻む年

 【4月19日】

 8勝6敗1分け、貯金2。首位巨人と1ゲーム差で広島と同率の2位タイ。これは昨季15試合終了時の成績である。今年はというと、15試合を消化したこの夜、中日にサヨナラ負けで3位に転落。9勝6敗で首位広島とは2・5差。1年前より貯金は一つ多いが、首位との差は1・5開きがある。

 去年より、ええやん!

 金本阪神2年目に対するファンの声はおそらくそんな感じだと思う。これは首位広島と24・5差の4位に終わった昨季の最終成績と比べて「ええやん」ということだけど、実は16年度のスタートも決して悪くはなかったのだ。

 では、ファンの印象度が昨季より高まっているのはなぜか。糸井嘉男の存在感。原口文仁の勝負強さ。この日、粘投でゲームをつくった秋山拓巳のローテ入り…ほかにもある。でも、金本知憲が最も「大きい」と感じている要素はやはり正捕手の確立であろう。

 「一工夫がほしい」。この夜、金本は試合後にそう話した。苦言の矛先は、荒木雅博、大島洋平の二人に2試合で計11安打されている配球に及んだ。これも梅野に対する期待の裏返しにほからなない。昨年を振り返ると、開幕から15試合の先発マスクは梅野〓(F9DC)太郎が8試合、岡崎太一が7試合。正捕手を定められず、分業制で船出していた。126通りものオーダーを組んだことで揶揄もされたが、今年だって15試合の先発オーダーは既に昨季の同試合と同じ5通り。北條史也を開幕から11試合目でスタメンから外すなど、レギュラー野手が完全に固まっているわけではない。シーズンを通して遊撃と捕手、センターラインを固めることが長丁場の優先事項なのだ。

 さて、今年は梅野がここまで全試合スタメン出場している。阪神捕手の全試合スタメン出場は2010年の城島健司を最後に6年間も出ていない。作戦兼バッテリーコーチの矢野燿大に聞いても、やはりそのあたりの認識を強く持っており、意図的に捕手陣に危機感をあおっているという。

 「レギュラーを取れるチャンスは『今じゃないの?』という話は全員にしているよ。将来振り返った時に『自分の年表』じゃないけど、ここでレギュラーを取れたんじゃないかな…と思うことがあるかもしれない。色んな選手を見てきたけど、チャンスはそんなに何回もないと思う。だから、皆には『後で振り返った時に今がそのチャンスだったと感じると思うよ』という話はしてきたよ」

 この夜、MBSラジオの解説でナゴヤドームに来ていた谷繁元信を見て金本の言葉を思い出した。

 「俺の場合、投手というより捕手と勝負していた。特に谷繁との対戦は楽しかったよ。やるのもやられるのも捕手次第だったから」

 この夜、矢野は言った。「投手からの信頼もつかみかけている。今の守りをしてくれているなら、打つ方が悪くなっても、行かせられる」。梅野が球団7年ぶりの全試合スタメン出場を果たしたその先に、虎の未来が開ける。=敬称略=

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