“邪魔”したディアス、恨んでゴメン!

 金本知憲氏がプロ野球人生の秘話を語る連載「21年間の舞台裏」。個人記録に執着することを嫌ったアニキが意識した連続無併殺打記録。タイ記録も新記録もきっちり“邪魔”が入った。今だからぶっちゃける本音とは…。

 日本記録のかかった打席は無死一、二塁でした。新聞記者から記録、記録と言われていたこともあって、ここまできたら、惜しかったなあ…では終わりたくなかった。

 相手はジャイアンツの上原浩治投手です。なんとかいい形で。そんな思いでバットを振ると、打球はライト前に抜けました。均衡を破るタイムリーヒットとなり、1962年に東映フライヤーズの毒島章一さんがつくった900打席連続無併殺打の日本記録に並ぶことができました。

 こうなれば欲が出る。次は新記録です。次の打席で、ランナーなしか2アウトで回ってくれば、自動的に記録達成でした。ところがまた、試練です。また、ディアス選手です(笑い)。

 巨人に逆転され、1点のリードを許して迎えた六回裏でした。先頭の東出選手はライトフライ。続くディアス選手は…きっちり四球を選んで、1死一塁。またかよ…。今だから、正直に白状いたしましょう。おい、ディアス!三振でもいいんだぞ!ネクストサークルで、僕は内心、そう思っていました(笑い)。

 個人記録に執着することはなかったけれど、この記録にはこだわっていたので、2度も邪魔をするディアス選手をちょっぴり恨みました(笑い)。開き直って、上原投手の投球に集中しました。

 2ボール2ストライクになりました。嫌なカウントです。いま思えば、このときの僕は勝負強かった。フォークを狙い打って、広島市民球場のライトスタンドに逆転2ランを打つことができたのです。これ以上ない形で新記録を達成できたことが、すごくうれしかった。ディアス、恨んでごめん!(笑い)。逆転できたのは君のおかげです。

 4番打者として達成できたことも、ひとつの誇りです。阪神に移籍してから思いました。この記録が抜かれるとすれば、赤星憲広選手かなって。5年連続盗塁王でしたから。併殺にならないために必要なことは、一生懸命走ることと、運でしょうね。技術的なことを言えば、打ったあとの一歩目が大事だけど、振り切ってから走り出すスピードはおそらく、僕のほうが赤星選手より速かったんじゃないのかな。00年の5月12日から1年以上続いたこの記録は、それはもう、あっけなく途切れました。

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