阪神・近本 山あり谷ありの2026年 連覇の今明かす至高の“チカ・マインド” 死球で長期離脱もネガティブさ極力排除で怖さなし
阪神の近本光司外野手(31)が、目の前の戦いで何を感じていたか、考えていたかをつづるコラム「余韻」。2リーグ分立後球団史上初のリーグ連覇を成し遂げ、あらためて26年シーズンを偽らざる言葉で振り返った。「楽しむ」をテーマにした1年は、死球による左手首の骨折で約3カ月の離脱。初めて経験する日々で抱いた“チカ・マインド”は、すでに27年を見据えていた-。チームに欠かせぬ至高の思考を包み隠さず明かした。
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これからは「楽しく野球がしたい」-昨年、この優勝コラムで誓いを立てた。初めて国内FA権を取得し、自分の選択として残留を決断。僕がグラウンドで楽しむ姿を見せることで、みんなに元気や勇気を与えたいと願った1年だった。どんな形でも優勝は、優勝。けがをしてよかったと思えるように頑張ろうと思っていた。まだ、シーズンは終わっていない。もう少し頑張ります(笑)。
大変だったな、痛かったやろ…今年、ファンの方や知人、友人からよく掛けられた言葉だった。死球の影響で左手首を骨折。初めて長期離脱を余儀なくされたシーズンだ。心配やねぎらいはありがたい。ただ一方で、考えれば考えるほど自分が不利になるような、ネガティブなイメージに持っていかれると感じた。
だから、あの時は「あ、折れちゃったか」と。なら、どうやってリハビリをしようか、この期間に何かできることは…せや、せやってメモに書いていく。そんな時はネガティブなことを考えてない。死球を受けた試合の映像も見ないようにした。23年に死球で脇腹を骨折した時もそうだ。病院の先生に「実際、どこに当たったの?」と、チェックされた時くらいだ。
特にテレビからの映像は、自分の感覚で脳裏に描く映像とリンクする。こういう角度、こういう球で、このコースに来たから当たったと一致するけど、僕はそれをしたくない。できるだけ自分の目で見たものだけを残すことで、なるべくネガティブなイメージを排除するようにしていた。よく、「死球の後で打席に立つのは怖くないのか」と聞かれるが、次に対戦した時にも、軌道がどうだったというのも覚えていない。気にしていないから怖さもないと言える。
リハビリ期間もそうだった。文字では「復帰」と書くが、元の状態に戻すつもりはなかった。そう思っていたら、打ち方も戻している。新しい何かを見つけにいこうと考えたから、以前との比較をしようとも思っていなかった。そもそも打ち方なんて毎日違うし、毎年違う。2カ月半ぶりに皆さんの前に立った時、大きく変わっていただけで1日、1日で見たら誤差が広がっている、くらいの感覚だ。大きく心境が変わったわけでもない。
2軍にいた2カ月半はリハビリ、トレーニングで毎日が忙しかった。1日、1日が充実していたが、今思えば短かったし、もっとできることは…そんなになかったかな(笑)。先の見えないことを続けてきてよかったなと思う。本を読む、散歩をするなど、取り組みが自分の習慣になるのは、大体2~4週間かかると言われる。実際、骨折してから取り組み始めたことが、もしかしたらこうかも…と今結果に出始めている。本当に体が変わってくるのには実感として、3カ月ぐらいかかるんだなと気付きがあった。
巨人との優勝争いが続いた終盤に7連敗。ただ、焦りはなかった。僕たちはシーズンを通して勝たないといけない。自分たちの強み、仕事を全うすることが大事。タイガースらしく戦えば大丈夫だと思っていた。ただ、一つだけ。「楽しかった」と胸を張って言える。2026年と言えば、あんなこともあったなと振り返った時、思い出せるシーズンだったんじゃないかなと。僕の人生には山と谷がある。正解、不正解はあまり気にしなくてもいい。それ自体も楽しめたと思っている。
今だから明かせることもある。個人のことだけを言えば復帰後は、来年に向けた準備とも思っていた。その上で勝つということが大事だと自分に言い聞かせた。そんな“準備”の一つが初球打ちにある。来年からセ・リーグもDH制が導入される。これまで初球を見逃すことが多かったのは、前を打つ9番が投手ということもあった。
監督、コーチには打ってもいいと言われるが、実際に打席に立つと難しさもあった。ただ、来年からは気にしなくてもいい打席が増える。投手も、どんどんいい球を投げてくるようになるはずだ。そうなった時、初球から打てる球を振りにいくことが急にできるかと言えば、決してそうではない。だから狙っていない球が来た時に、どうコンタクトできるか、今年からやろうと思っていた。
ある程度、ゾーンに来た球は振りにいって、どう修正をかけたらいいかな…とか。これをオフシーズンの課題にしていけばいいのかなというのを考えながらやっていた。まだ分からないことも多いが、今年、やりたいことがだんだんと見えてきた感じはある。そんな全てのことが、リハビリがなければ取り組んでもいなかったこと。いい期間にできた、方向性は間違っていなかったなと感じる。
見えている部分は打撃フォームの変更だが、それ以外にも、いろんなことに取り組んできた。すぐ結果なんて出ないし、すぐに体が変わるわけでもない。それに、実感が湧くようなことは重要ではないとも考えている。大事だと思って続けてきたことが、3、4カ月たってから『あ、これはあの成果が出ているんじゃないか』とか、本当はそういうものが大事なことなのかなと思っている。
今日はこういう打ち方してとか、変えてみて良い結果が出たとしても、それはあくまで長続きしない。でも、ずっと取り組んできたことが、2、3カ月先に変化を感じると結構、長続きをする。だから今、打撃以外でも他のトレーニングでも、リハビリ期間に取り組んだことの成果が出ているので続けてよかった。リハビリ期間がなければ、取り組んでもいなかったことなので、いい期間にできたなとは思っている。(阪神タイガース外野手)
