阪神・坂本 WBCで感じた世界との差「シンプルに勝負できる技術が足りない」「勝負の土台を一緒にしないといけない」

 自身の思いを語った坂本
 WBCの台湾戦で勝利し、ナインとタッチを交わす坂本(左から3人目)=6日
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 阪神の坂本誠志郎捕手(32)がデイリースポーツ読者に向けて思いをつづる、新コラム「打-dozen-」がスタートする。第1回は初出場したWBCで感じた世界との差、自身の足りなさなどを語っている。タイトルに込めた意味やコラムを始める理由も明かした。今後は、月に1度ペースの不定期掲載となる予定だ。坂本にしか出せない言葉の深みや面白さを味わえる内容になっている。

  ◇  ◇

 デイリースポーツ読者の皆さん、坂本誠志郎です。今回、コラム「打-dozen-」を始めることになりました。立場を考えても、自分のことだけを考えてやるわけにはいかない。だからといって、うちの選手で言えばテル(佐藤輝)やチカ(近本)、森下みたいな飛び抜けた“タレント力”があるわけでもない。でも何かを発信していかないと、という思いは少なからず感じていました。

 こうやってアウトプットしていく中で、自分を見返すタイミングになるかもしれない。「こう思ってほしい」というよりも「独り言」だと思ってください。何かを感じて、考えて、その結論にたどり着いたという独り言。野球のことかもしれないし、野球を通した野球のことじゃないかもしれない。「ふーん」と思ってもらえたらいいですね。

 1回目はWBCについて話したいと思います。正直、いろんなことが足りていないということしか残りませんでした。ベネズエラと試合をした時も、ドミニカとベネズエラの試合を見た時も、足りないことだらけ。パワーも、スピードもだけど、シンプルに勝負できる技術が足りないな、と。

 表現として合っているか分からないけど、頭を使うことに逃げていたかもしれない。野球は頭を使ったら、弱いチームや人が強いチームや人に勝てるスポーツだと思っているんです。そういう側面や部分をたくさん見てきたし、それで勝負してきました。そこを否定するわけではないけど、そこに逃げていた。

 もっとパワーや体のキレという意味でのスピードとか、シンプルな技術にフォーカスしないといけない。頭は今まで通りに使うけど、技術がもっと上がれば、今使っている能力の最大値も上がるだろうし。もっと自分の中のことにフォーカスして、強化しないといけないと気づかされました。

 そのために今の練習量じゃ足りない。強くなりながら野球をしていかないといけない。「シーズンは長いから」とか「しんどい」とか言ってるレベルじゃない。プロ野球人生はもう折り返しているかもしれないけど、何事も遅すぎることはないと思います。年齢にあらがって野球をやるのもいいと思うし。年を取ってきた、ケガが怖い、そんなことを今言っていたら、自分が見た景色には到底追いつきません。

 2023年のWBCが終わってから、ここ数年は次のWBCで大谷翔平の球を受けることがモチベーションでした。また2年後にロサンゼルス五輪があって、次にWBCがある。今は2年で自分が感じた差を埋められるのかという不安の方が強い。まずそこを埋めて、勝負の土台を一緒にしないと同じことになるという焦りかな。その気持ちがすごく強いですね。

 この経験をタイガースにも、日本の野球界にも発信しないといけない。シーズンが始まったけど個人の成長はチームの成長にもつながる。試合中にチームのためにプレーをすることが、個人のためにもなる。自分のためにと思っている練習が、試合ではチームのためになる。そこも共存していると思うから。みんなでいい形で高め合えれば、シーズン中に強くなっていきながら勝っていける。それが大事なんじゃないかなと思います。

 ここからは足りないことをモチベーションにしていきます。1年後、2年後にどう思ってるかは分からないけど、今はもうそれしかない。足りないところや技術、フィジカルを補う。でも「補う」というのは、元々何かがある人がプラスアルファしていくこと。そもそも、もう一回作っていかないといけない可能性もあります。試合では勝つこと、チームが一番になるために野球をやっていく。でも自分の時間や今後のオフシーズンは、今までと全く違った取り組み方になるんじゃないかな。

 シンプルに言っちゃえば、見るからに打球の質が変わったとか、数値が上がったとか、目に見える力をつけないといけない。飛ばすためにはフィジカルなのか、技術なのか。飛ばしたいから技術やフィジカルを見つめ直す。どっちもリンクしないと勝負にならない。どうなりたいかだけじゃなくて、そのためにどういうことをしないといけないか、土台の方を見ないといけない。

 「飛ばしたい」じゃなくて「じゃあ、どうする?」、「もうちょっと筋肉量が必要だよね」、「じゃあ体重を増やさないといけないね」、「でも体重を増やしたらスピードが落ちるよね」、「それじゃ意味がないよね」とか。いろんなことを考えながら、強くならないといけない気がします。

 マッキーさん(ソフトバンク・牧原大)とか合宿中もめちゃくちゃ振っていました。ロングティーとかもバンバン飛ばすし、バンバン数も打つし。首位打者を取って、それですから。僕は全然足りないんじゃないですか?できるトレーニングの量、今までのやり方も見直さないといけない。トレーニングも中身を変えていこうという思いもあります。練習量も夏場は暑いからって落ちてきたりするけど、振れる時にやっぱり振らないといけない。いろんなことに、本当に逃げたくないです。

 若手選手にはタイガースという枠組みだけで野球の物差しを測らないでほしい。タイガースでレギュラーを取りたい、試合に出たい、勝ちたい。もちろんそこからスタートするけど、たどり着いた時、こうやっていくんだと見えた時、早く次の物差しを作ってほしい。

 藤川監督も「歩みを止めないで」と言うけど、現役でいる以上はまだ足りない、これはあかんというのを感じながらやること。まだその先があるとか、次はもっとこうしたいとか。ゲームと一緒です。1面をクリアしたら、次のステージがあるわけで。クリアしたステージを自分で上書きしていかないと。今見ている世界でできたことは、もう次のステージなので。

 テルも(森下)翔太も今回、上のレベルを見ている。あいつらは今後、もっとそういうところを目指してやると思います。ということは、今できている、やっとできてきた若い子たちが、テルとか翔太に追いつこうとするところから、あいつらが先に行っちゃえば、その差はもっと広がるばかり。それについていけばテルと翔太がまた上を目指す。みんなのステージを一つ、二つ上書きしていくことが、チーム力が上がることになる。そうやっていろんなものを積み重ねないといけない。

 MLBとNPBの差も感じました。何かしらの工夫ができたり、いろんなことを議論して、方向を見いだしていくきっかけになればと。これを逃すと、本当にいろんなことが遅れていくんじゃないかなと思います。大谷くんが言ってたけど「僕らは僕らの土俵でやるんでいいです」という感覚だったら、それでいいと思います。でも、その土俵で野球をやらせてくれる環境は今、日本のプロ野球しかないんじゃないですか?世界基準を日本の野球に合わせてくれるならいいけど。「世界一になりたい」という野球をやる時に「その時だけ対応しましょう」で、実際どうだったか結果が見えた。それに対して改善点や取り組みができないと、同じことになる可能性があるんじゃないかなと思います。

 ◆打-dozen- 12個で1組となる「ダース」の漢字表記を自身のコラムタイトルとした。スタートにあたり、坂本がこだわったのは「自分のことより、他の人の思いや話題となったことの裏側を話したい」ということ。ダースという単位はなぜ、キリのいい10ではなく12になったのか。十二進法に由来され、2や3、4、6と多くの数字で割り切れることで便利な数字とされていた。

 このタイトルには、知られざる人の思いを読者に分け与えるという意味がある。さらに、12個のうち1つでも欠ければダースという単位は成立せず、裏側を語ることで物語が完成するというテーマも併せ持っている。背番号「12」の虎の主将にピッタリのコラムタイトルとなった。

 ◆坂本 誠志郎(さかもと・せいしろう)1993年11月10日生まれ、兵庫県出身。176センチ、79キロ。右投げ右打ち。履正社2年夏と3年春に甲子園出場。明大を経て15年度ドラフト2位で阪神入り。23年に初のゴールデングラブ(GG)受賞。自己最多117試合に出場した昨季はGGに加えベストナインにも選出されるなど、阪神の正捕手に定着した。

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