阪神OB・江夏氏の10年ぶり聖地帰還が実現した理由 サプライズの連続に球団も感動「甲子園に来るとアドレナリンが出るのかも」

 ファーストピッチセレモニーを終え、ベンチに向かう(左から)田渕幸一氏、掛布雅之氏、江夏豊氏=25日
 ファーストピッチセレモニーを務め、退場する江夏豊氏(左下)、田淵幸一氏(左上)、掛布雅之氏=25日
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 阪神は25日の阪神-巨人戦(甲子園)を「Tigers Legends Day」として開催。試合前のファーストピッチセレモニーでは、OBの江夏豊氏がサプライズで登場し、掛布雅之OB会長、田淵幸一氏とファンを盛り上げた。

 伝説の左腕が甲子園に立つのは、2015年8月30日のレジェンドデー以来10年ぶり。掛布OB会長が動かなければ、実現しなかったサプライズだった。

 2025年1月下旬。2024年12月に就任したばかりの掛布OB会長は、あいさつするために球団を訪問した。その席で球団創設90周年のイベントに「江夏氏を呼べないか」と球団に掛け合っている。「90周年でいっぱいOBを呼ぶのに、江夏さんがご健在ならアプローチしないと」と強い意欲を示したという。

 球団は球団創設90周年の節目を迎えるにあたって、1月14日にイベントや企画に携わるアンバサダーとして、吉田義男氏、田淵幸一氏、藤田平氏、真弓明信氏、掛布雅之氏、岡田彰布氏、金本知憲氏、矢野燿大氏、鳥谷敬氏の9人の就任を発表している。

 掛布OB会長は体調面もあって、そのメンバーの中に江夏氏の名前がないことを気にしていた。そして、球団史を彩った伝説の左腕にも、もう一度、甲子園に立ってもらうことにこだわった。

 球団も考えに賛同した。江夏氏を身近で支える人から、同氏は体調面に不安がある今でも10日に1度ほどのペースでランチに出かけ、車いすでも外出している情報をキャッチ。江夏氏の奥さんにもアプローチして、イベント参加の承諾を得た。

 一方で掛布氏は自ら江夏氏に電話して参加を依頼。サプライズで今回の「Tigers Legends Day」でファーストピッチセレモニーに参加することが決まった。

 最高の舞台に江夏氏も張り切っていた。球団も予想していなかったサプライズを行い、ファンを盛り上げた。

 球団は当初、江夏氏にはマウンドに向かった後、車いすに座ったまま左腕を振って投げるフリをしてもらう予定だった。

 ただ、同行していた江夏氏の奥さんがイベント前に「立ち上がると思いますよ。2、3歩歩いて倒れるかもしれませんが」と言ったという。

 すると、奥さんの予言が的中する。「9番・ピッチャー、江夏」のアナウンスとともに、掛布OB会長が押す車いすでマウンドに向かった左腕。鼻に酸素チューブを装着した状態で立ち上がった。そして、チューブがひっかかっても、振りかぶって投げる姿まで見せようとした。

 1968年に歴代1位のシーズン401奪三振を奪うなど、幾多の伝説を残したレジェンドの姿に、イベントに携わった球団関係者も感動。「びっくりでした。最高のパフォーマンスでした」。捕手役を務めた田淵氏も「泣けてくるね」と振り返るほどの光景だった。

 江夏氏は「甲子園はふるさとだから。この球場をバックにして野球をやれたんだから。それが自分の一番の誇りです」と振り返ったように、甲子園が江夏氏の背中を押したのかもしれない。

 甲子園開幕となった8日・ヤクルト戦では、「レジェンドナイン」として試合前セレモニーに参加した金本知憲氏と赤星憲広氏も、イベント前にアップをするほど張り切っていたという。前出の関係者は「OBの方は甲子園に来ると、アドレナリンが出るのかもしれませんね」と笑う。今回も江夏氏に見えない力が宿ったのかもしれない。

 感動はこれだけでは終わらない。ファンを盛り上げた江夏氏にもサプライズが待っていた。マウンドから降りた後、向かった一塁ベンチ前に懐かしい顔があった。

 球団生え抜き選手で初めて2000本安打を達成した藤田平氏が、球場にいたOBを招集。グラウンドまで足を運び、川藤幸三氏、江本孟紀氏、上田二朗氏、峯本達雄氏、亀山努氏の6人で出迎えた。江夏氏は「俺にとっては懐かしい戦友だもんね。いいヤツらといっしょに野球ができたよ」と声をはずませた。

 前出の球団関係者は「藤田平さんが先導してくれたのですが、ベンチ前にともに戦ったメンバーがいたことを江夏さんも喜んでいました。本当に素晴らしい光景でした」。レジェンド左腕の甲子園帰還を喜ぶように、スタンドからの万雷の拍手はいつまでも鳴りやまなかった。

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