阪神・佐藤輝 劇的1号!今季29打席目待望の一発「最高です!」 土壇場九回同点→延長十回に決勝弾!
「ヤクルト6-7阪神」(5日、神宮球場)
阪神・佐藤輝明内野手(25)が6-6で迎えた延長十回、右中間に決勝の1号ソロを放った。今季29打席目で飛び出した待望の一発だ。開幕から調子が上がらず、前日4日の試合からはクリーンアップを外れ、打順は6番に下がった。意地の詰まった劇弾でチームを逆転勝利に導き、ヒーローインタビューでは「最高です!」と歓喜の声を張り上げた。
打った瞬間だった。佐藤輝は豪快にバットを放り投げ、余韻たっぷりに走り出す。「やりました!最高です!」。六甲おろしが鳴り響き、雨音を大歓声がかき消す。延長戦までもつれ込んだ、3時間51分の熱戦。魂の一振りで仕留めた。
延長十回1死走者なし。1ボールから木沢のカットボールを振り抜いた。「打った瞬間、完璧でした」。白球は小粒の雨を切り裂き、右中間席に着弾。「最低でも塁に出る」という意識が最高の結果をもたらした。
開幕から7戦目、29打席目で待望の一発。ベンチ前では岡田監督も笑顔で迎えた。ナインからはハイタッチに加えて、頭をしばかれる。そんな手荒い祝福にも、満面の笑みでうれしそう。苦しみから解き放たれたように大声でほえて、感情を爆発させた。
この日も4打席目まではノーヒット。「きっかけになれば」と1、2打席目は白木のバットで打席に向かった。「なんか変わるかなと思って」。小さなことにもすがりたくなるほど、1本を出したかった。「1本出たんで良かったんじゃないですか」。米シアトルのドライブラインや自主トレでの取り組みが、やっとやっと報われた。
試合終了後には雨脚が強くなり、気温も下がっていた。そんな中でもスタンドには雨具を使い、ヒーローを見つめる少年少女の姿があった。ファンからの「ありがとう」や「頑張って」が原動力の一つ。「特に小さい子に言われる瞬間は、本当に頑張ろうって気持ちになりますね」。打って恩返しがしたい。そして、野球だけではなく、オフには日常の一幕で感謝の行動を見せていた。
今年1月の近大での自主トレ公開。終了後には地元の少年野球チームと交流。1人ずつ丁寧にサインを書き、打撃の質問には優しく答えた。同月には奈良県の児童発達支援施設を訪問。子どもと同じ目線までしゃがみ込み、サイン会や写真撮影などで交流。「こういう活動も大事にしないとな」。後輩の戸井に慈善活動の大切さを説き、虎の看板選手としての自覚もにじませた。
お立ち台では改めて感謝を口にした。「ファンの方も寒い中、応援してくださって、それが力になりました」。テンプレートではない。心の底からの本心だ。今季初めてカード頭を取った。「2、3戦目も勝っていけるように頑張ります」。今季1号が覚醒の合図となる。